2022年7月7日

『これから企業がSDGsに取り組むべき7つの理由』~後編~

企業がSDGsに取り組むべき理由やその目的について
アズコネクト社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士 山本哲史氏に、
わかりやすくまとめていただきました。後編も是非ご一読下さい。
『前編』はこちら…
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4.企業価値を高めるために必要な要素

SDGs/サステナビリティといった未解決の課題に取り組む上で、人材や知的財産等を含む企業の無形資産に近年は注目が集まっています。米国S&P500における市場価値(≒株価)の構成要素において、1975年時点、無形資産・無形要素の構成比率は2割にも満たず、8割超(約83%)は物的・財務的資産によって構成されていました。2009年時点、物的・財務的資産と無形資産・無形要素の構成比率が逆転し、8割超(約81%)の市場価値が無形資産・無形要素によって構成されています。このように、企業価値の向上という側面において、無形資産が注目されるようになっています。このことは、無形資産を生み出す人材の獲得や人的資本への投資が、今後日本においてもキーワードとなることが示唆されています。

優秀な人材を惹きつける上で、企業の存在意義やビジョンは欠かせません。経産省の研究会*3では、経営環境の不確実性が高まる中で企業が中長期で持続的に企業価値向上を果たしていくためには、企業が、不確実な事態が生じた場合を含め、常に経営判断の拠り所とすることができる、過去・現在・未来を通して不変的な自社固有の価値軸を、自社の存在意義(パーパス)として明確化することの必要性が問われています。また、企業は、ステークホルダー(顧客、従業員、取引先、株主/金融機関、行政、地域社会等)ひいては社会に価値を提供し、それを通して企業価値を向上させていく存在であり、昨今の社会のサステナビリティの要請の高まりも踏まえると、自社の存在意義(パーパス)として、社会のサステナビリティ(将来の社会の姿)も考慮した上で、自社が長期的・持続的に社会に価値を提供する存在であるのか、というあるべき姿である「ビジョン」を明確化する重要性がより高まっていることが言われています。パーパスやビジョンを発信し、社内外に共感を生み出し、人や知恵などの無形資産を集めつつ、組織内の共創文化を養い、創発が生まれやすい環境を整えることも、企業がSDGs/サステナビリティといった未解決の課題に取り組む上で重要な要素と言えます。

*3経済産業省|サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/index.html

5.重要視される企業の「社会貢献度」

「社人材の採用という側面においても、近年は、学生からの「御社のSDGsの取り組みを教えてください」という質問が増えています。ディスコ社の「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」(2021年8月調査)*4によると、企業のSDGsへの取り組みと就職志望度の関連について尋ねたところ、SDGs に積極的に取り組んでいることが、その企業への志望度に「影響する」と回答した学生は、「とても影響する(志望度が上がる)」「やや影響する」を合わせて 4 割を超える(計 41.2%)とあります。また、就職活動を終了した学生に、最終的に就職先企業に決めた理由を、30 項目の選択肢の中から5つまで選んでもらったところ、最もポイントを集めたのは「社会貢献度が高い」(34.3%)とあります。調査では、年々社会貢献度に対するポイントが増加しており、就職先企業の決定に与える影響度合いが増していることがわかっています。企業の競争優位を支え、イノベーションを生みだす資産は人材です。企業の長期的価値を生み出していく資産となり得る優秀な人材を確保していくうえで、企業のSDGs/サステナビリティ課題の解決に向けた取り組みは不可欠になってきていると言えます。経済産業省によると、こういった SDGs を始めとする社会課題への取り組みは従業員のエンゲージメントを高めるとも言われています。

*4 株式会社ディスコ|「就活生の企業選びと SDGs に関する調査」(2021 年8月調査)
https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/sdgsshu_202108.pdf

6.世代による「働く価値観」の違い

また、一般的に「ミレニアル世代」「Z世代」と呼ばれる若い世代においては、環境や社会問題への意識が高いと言われています。2019年にマッキンゼーがAPAC(オーストラリア、中国、インドネシア、日本、韓国及びタイの6ヵ国)で16,000名以上の消費者を対象におこなった調査では、各国において、Z世代の60%から80%が、メーカーやブランドは「自社の商業活動における環境的責任を担うべき」と考えているということもわかっており、調査結果全体からも持続可能な消費行動を意識していることが明らかになっています。2025 年にはミレニアル世代以降の生産年齢人口に対する比率も大きく上昇し、従来の資本主義的価値観からサステナビリティを重視する価値観へより変化していくことが想定され、こうした流れはますます加速すると考えられます。
働く目的について日本でアンケートを取ると、世代によって価値観が違うことがはっきりわかります。ミレニアル世代やZ世代は「楽しく働きたい」という人が非常に多く、一方で「自分の能力を試したい」という層は少数派です。「社会の役に立ちたい」という層が最も多いのもミレニアル世代で、それに続くのが「Z世代」なので、若い世代は「楽しく社会に役立ちたい」という意識が強いということがわかります。それに対して40歳以上の層では、「自分の能力を試したい」、つまり自らの成長を重視する人が多いことが分かっています。このように消費のみならず、働くことについても世代間で大きなギャップがあります。

7.新たな企業価値創出に必須のSDGs

このように、経営資源であるヒト・モノ・カネの調達において、中小企業であってもSDGsの取り組みは経営の持続可能性を考えても重要になりつつあります。また、今後はミレニアル世代やZ世代以下の世代が消費や労働力の中心を担うようになると、消費者や働き方の価値観も大きく変わることが予測されます。これらのことから、今後は、企業規模によらず、SDGs/サステナビリティへの取り組みはリスク管理のみならず、新たな企業価値創出につながる経営課題としてとらえることの必要性が増していると言えます。また、多様なステークホルダーとのパートナシップ(協働)も、新たな企業価値創出に重要と言えるでしょう。これらを実現していく上で、経営陣及び従業員のみなさまが、従来の価値観をアップデートし、新たな知識・スキルを学ぶリスキリングも重要な要素と言えるでしょう。

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◆アズコネクト社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士
一般社団法人SDGs推進士業協会 理事 山本 哲史(やまもと さとし)氏

山本 哲史 写真2000年に大学卒業後、独立系人材派遣会社にて総務、人事、経営企画等を担当。
2005年に社会保険労務士試験合格。以降も企業内において約12年間、人事諸制度設計や社内規則策定、採用、経営企画等の実務及びマネジメント業務に携わる。
2012年よりワイズHRM社会保険労務士事務所(現アズコネクト社会保険労務士事務所)開業。
人事労務諸課題のコンサルティング業務で中小企業の働き方改革を支援している。
2014年に給与計算、経理事務のアウトソーシング、キャリアコンサルティングの事業を行うアズコネクト株式会社を創業。また、2018年より一般社団法人SDGs推進士業協会 理事に就任。
SDGsの普及や中小企業へのSDGsの取り組みのアドバイスを行う。

(山本哲史講師への講演依頼はこちらhttps://www.koushi-select.com/list/1551322520-965293/