2023年7月31日

その他、印象に残った講演として -久多良木健氏、佐藤可士和氏-(前編)

その他、印象に残った講演として,久多良木健氏、佐藤可士和氏―

~第137回(2023.1)全国経営者大会の感想③-1~

◎はじめに

さて、今春大会の感想文も第3回目です。これまでお二人の講演の感想を述べましたが、その他の講演についても少々触れたいと思います。
いつも大会講演を通して、最新のビジネス状況だけでなく、社会経済の現状や課題まで見えてきて、
これからのビジネスのあり方への確信がより強くもてるように思えています。
今春の大会もそうした思いを強く感じました。

まずは基調講演についての感想です。

◎講演の感想1

講演タイトル:
「10年先の未来から考える」 講師:久夛良木 健氏

ソニーのプレイステ―ション生みの親である久夛良木氏の講演です。久夛良木健氏
デジタル技術が超速に進歩する時代に入って、“未来への想像力がいかにビジネスにとって大事か”
お話をお聞きし、あらためてその思いを強く感じた次第です。
久夛良木氏は、子供のころSFにはまり「ミクロの決死圏」「2001年宇宙の旅」等にはまったが、
今まさに実現しつつある世界であり、SFが未来の現実を描いていることを実感している、とおっしゃっていました。
私も子供のころSF的な世界に魅せられたことがあり、その当時の空想癖を思い出しました。
それから、1986年に親子の電気スタンドをめぐる戯れを描いているアニメーション動画を見て衝撃を受け、
その時テクノロジーとエンタメの融合の可能性を直感したそうです。
そしてエンタメがこれまでとは次元の異なる全く新しいものになることを確信したことで、
プレステを開発する発想が生まれた、とおっしゃっていました。
また、実際にプレステの事業を立ち上げるにあたっては、半導体の累積的な進歩を大前提に、
30年先までのロードマップを作って事業計画を策定し、実際にそのことを踏まえて事業を進めたとのこと。
事業のはじめから、現実の『物理空間』と『インフォメーション空間(情報空間)』の同期化も視野に入れていれており、
そこではメタバース世界を想定した様々なビジネスが展開されるだろうことも予測していた、とおっしゃっていました。
さすが、そこまで未来を見通していたんだ、と私には思えて、自分の想像力不足を痛感しました。
そしてこれから(近い未来に)AIが人間を超える可能性がある、とおっしゃっていました。
そうなった時の世界がどうなっているのか、またビジネスとしても、そのことをどうとらえ、
どうしていくべきなのか。
そうした問いがすべての経営者に突き付けられていると、あらためて思えた次第です。
最後に、これからのビジネスにとって大事なことをスライドで示していただきました。
以下の通りです。急いでメモした内容ですので、一部抜けていたり誤った表現もあるかと思いますが、
皆さんのご参考にしていただければと思います。

①・・妄想が未来を生む。
②異能を活かして、チャレンジ。
③はるかな夢の実現に向け、長期のロードマップを描く。
④最初は少数精鋭。速やかに経営判断。
(ここぞというタイミングを逃さない)
⑤求心力よりも「遠心力」が緒戦の勝敗を決する。
⑥緒戦で失敗しても、ひるまない。
⑦世界最先端のテクノロジーを継続的にウォッチ。
⑧イノベーションを楽しむ。
→あくなき好奇心が、さらなる未来を引き寄せる。

◎講演の感想2

講演タイトル:
「ブランディングにおける社会的責任」 講師:佐藤可士和氏

ユニクロのロゴなどを手掛けている著名なクリエイターである佐藤可士和氏の講演です。
まず初めにブランドに係る歴史を次のようにお話していました。
・1990年代からブランドの重要性が強く言われるようになり、
・2000年代で、広告宣伝だけでなく、デザインの重要性が注目され、さらに・・
・2010年代からは、社内と社外の境が無くなってきて、会社と外部、お客様とのコミュニケーションの重要性が強調されて・・
・最近では、パーパス(社会的な存在意義、責任)が問われる時代になっている。

私のビジネス感覚からも、とても納得のいくお話でした。
こうした社会的な変遷を今一度しっかり確認することが、これからの経営にとても大事と思います。
そして、次に佐藤様ご自身が手掛けられた、いくつかの代表的な実例をご紹介していただきました。
一つ一つ実例に対する佐藤様の思い入れや意義価値を直接ご本人からお聞きできることがとても貴重と思いました。
デザインやブランドは単に感覚的なものではなく、
そこに深い意義価値が込められており、
物語的なストーリーとして論理的に考えられたうえで作られている、
ということを実感出来ました。
また、Z世代は「ソーシャルグッド」をとても大事にしている。
高校生では学校で「SDGS」を習っていて、
そうした考え方が企業経営に反映しているのが当然と考えている、と言うお話には、はっとさせられました。
「SDGS」がこれからの経営にとって大事であることについては、観念的には理解していても、
実際の事業に反映されている中堅中小企業は少ないと思いますし、
高校生でも強い関心があることに自覚的な方は(私もがそうであるように)まだまだ少ないよう思います。
それだけ現在、社会の抱える課題が大きくなってきており、
その解決に対する企業の責任がより強く問われるようになっている、と言うか、
そこに大いにビジネスチャンスがあるということだと思います。
佐藤氏は、そうしたビジネスチャンスに敏感に反応されて、
それを実際の活動にビビットに反映させている、ということと思いました。
そして一方、社会への貢献活動がいかにみんなをイキイキ楽しくさせてくれるものか、
と言うことも実例のお話を聞いて実感出来ました。
私は「やる気を感じて、イキイキ楽しくビジネスを行う」ことが、
これからビジネスの必須条件と思っていますので、
佐藤氏の「社会的責任を強く意識した」活動には、とても共感した次第です。

そこで、佐藤氏の講演が終わってその後私が書いたメモもここに載せたいと思います。

【社会性】+【自社の強みこだわり】をドッキングし、
自由に 【素晴らしい理想を描く(ブランディング、デザイン)】
そこに人や企業が集まってくる。
【周りを巻きこむ】→【開かれた会社(社内+社外)】へ
【幸せな人】【幸せな会社】→【幸せな社会】の実現へ。

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

後編へ続く

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