その他、印象に残った講演として,小島雄一郎氏、冨山和彦氏
~第137回(2023.1)全国経営者大会の感想③-2~
(前編はこちら)
講演の感想3
講演タイトル
これからの「Z世代」が世の中を変える! 講師:小島雄一郎氏
(電通事業協創局)
この講演内容については、このコラム欄で関西経営管理協会の増岡様に
「【研修トピック】もうすぐ入社してくるZ世代の新入社員は、何を考え、どう行動するのか―」
と言うタイトルで、とても分かりやすく整理して書いていただいています。
是非皆さんには、その内容を確認していただけたらと思います。そこで私の方では、補足的な感想だけ述べましょう。
一番記憶に残ったのは、次のようなお話です。(私の意訳ですが・・)
「Z世代は、ありのままでいいんだよ、と言う感覚が強い。
そのため、親子関係も縦ではなく、横の関係になってきていて、
『スパイファミリー』や『鬼滅の刃』など、一般的な家族ではない話が受ける。
実際、母親と娘が友達同士になっているし、父親も『いじられキャラ』の方が上手くいっている。
会社もいじられキャラの上司とか。社長にも遠慮なく言える雰囲気が大事・・・。」
振り返って私も(嫁さんは当然のこととして)息子・娘から平気で言いたいことを言われるタイプなので、
とても安心しました。
そしてこのことは、これからの企業運営にもピッタリあてはまる、大事な要件ではないかと思えた次第です。
それは・・個を尊重したフラットな雰囲気の組織風土や組織運営を大前提に、
リーダーは無論のこと、社長さんも「社員から、言いたいことを言ってもらえる、いじられキャラっぽい方
が上手くいく」ということです。
私は、約20年前に『【普通の人型リーダー】が最強の組織を作る』と言う本(プレジデント社刊)を出し
ていて、その当時から「今後より変化多様化していくビジネス環境においては、
上の人が一方的に指示指導するというスタイルは、うまくいかない。
むしろ現場の一人一人が主体的に判断して臨機応変に行動する。
次にその現場の知恵や情報をチームや組織がすぐに活かしてスピーディに動き、大きな成果に結びつける。
そうしたことが出来る会社が勝ち残っていける。」と思っていました。
そのためにはカリスマ的なリーダー像ではなく、『普通の人』型のリーダー像がこれから求められてくる、
というのが本の主旨でした。
講演をお聞きして、ようやく、この本の考え方が主流になる時代に入ってきた、と思えました。
さらには、その当時以上に、社員一人一人の「明るく元気」がとても大事になって来ていて、
リーダーや経営者の皆さんが、そうした状態を実現するための意図した政策と共に、
自身のフランクな姿を意識して作っていくことが求められている、とあらためて思えた次第です。
(但し、それは社員さんを「甘やかす」こととは全く違うことは念を押しておきましょう。)
講演の感想4
講演タイトル
《総括》ポストコロナの日本経済再生戦略
-全産業が淘汰される未来に備えよ!- 講師:冨山和彦氏
日本共創プラットフォーム社長/元ボストンコンサルティンググループ日本法人社長
「全産業が淘汰される未来に備えよ!」
かなりショッキングなサブタイトルですが、そのぐらい極端に考えていい時代に入っていると思います。
「平和安定成長は今後まずなくなって、何が起こるかわからないと腹をくくる!ずっとすっきりしませんよ。」
と冨山氏はおっしゃっていて、まさにその通りと思います。
また松下幸之助の「不況、なお良し!」的な開き直りが必要、ともおっしゃっていました。
その上で「ビジネス大転換のスピードは、中堅中小オーナー企業の方が早い!」。
まさにその通りで、そこにビジネスチャンスがある、と思います。
そこから、グローバル大企業(G企業)と地域に根差したローカル企業(L企業)を比較したお話になる
わけですが、世界ではグローバル企業の比率が下がっていて、現在は70%がローカルで、30%が
グローバル企業。
このグローバルの比率がどんどん下がっていくだろうとのこと。
ちなみにアメリカでは、グローバルが20%だそうです。
またドイツでも地域分散型になっていて、ローカルが70%以上。
それから、東京の一人当たりのGDPは増えておらず、意外にいい仕事が無い。
住宅費が高いために、可処分所得は低い。・・結論として地方再生は日本再生の鍵と言うお話でした。
それからこれからの経営の大事なポイントとして、次のようなお話がありました。
1)DXについて、まずは顧客商品別で、どこで儲かっているかを掴むことが先。
儲かっているところをどうやってもっと伸ばすのか。また儲かっていないところをどうするか。
カットするのか、工夫して儲かるようにするのか?例えばいままでのアイドルタイムの時間に
これまでと異なった業務や商売を取り入れるとか・・。
→そして販路、取引先別収支までとらえる。
→製造でも、設計や営業費用、販管費まで入れて利益計算すべき。
そうすると、今まで見ていなかった実際の利益の出所や逆に赤字になっているところが
見えてきて、どこを伸ばし改善すべきかはっきりしてくる。
2)何はともあれ人材不足で、今後ますます人材不足が進んで行くことは確実。
その地域で人を確保できる会社と出来ない会社の差が拡大。後者は廃業へ・・。
3)そのためにも、付加価値生産性(一人当たりどれだけ稼げているか)を一番重視する。
まず粗利益率を上げること。薄利多売はもう成り立たない。
<人の生産性として・・従来の発想を変えること>
・タクシー運転手→若手より、60歳の人の方が一番生産性が高い。
(例えば帰り道でも、お客を見つけて帰るような工夫をしている)
・事務員 →座っているより、立って行う方が生産性が高い・・。健康にも良い。
・ホテル従業員→マルチタスクで手待ち時間を無くすことが、生産性を大きく高める。
(料理人でも、接客・・)
一つ一つのお話が、すこぶる実戦的で実行可能ですが、そうでありながら実際に多くの中堅中小企業で
できていないお話と思い、
もっといろいろお聞きしたいと思いました。
話しは広がってしまいますが・・
ちなみに思い出したのが、20年以上前ですが、私が業界トップの老舗ブランド雑貨メーカーをお手伝いした時のことです。
取引先店舗別収支が出ていてチェックすると、最大手の百貨店の収支が多くの店舗で赤字になっていてびっくり。
お話を聞くと、相手先デパートから派遣店員を何人も要求されたり、値引きのバーゲン要請も強いことが原因と分かりました。
他方で、高い利益を上げている店舗も数店舗あり、その理由はその店には派遣店員は出しておらず、
担当する営業マンがお店の他のショップの派遣店員さんに接客等をお願いしてうまく対応しているからだそうです。
またそうした関係なので、特にバーゲンを主体にする必要がない事も大きいようでした。
現場的にとても説得力のある話で納得しましたし、データを詳細に確認していくと、
そうした現場の実際の努力が手に取るように見えてきたことも覚えています。
しかし、そこまでは良かったのですが、その後が問題でした。
私は「そこまでわかっているなら、赤字店舗の業績改革をしっかり進めましょう」と言ったのですが、
「いやその最大手の百貨店様は、当社にとって一番の取引先であり、
世間でのブランドロイアルティも高いので、仕方がないんです。
当社の営業取締役との関係も深いですし・・」と言われてがっくり。
結局私は説得できないままになってしまったため、今でも苦い経験として時々思い出します。
と、横道にそれましたが、細かく収益を分けて管理すること。
とくに一人一人の従業員の付加価値に着目して、より高い付加価値を上げてもらえるような工夫を進めることは、
これからの経営にとって、一丁目一番地と言っていい大事な施策と、あたらめて確認できたよう思います。
ということで、今春大会の感想はこれくらいにしておきましょう。
実は、挙げさせていただいた講演以外にも、とても参考になるお話はいっぱいありましたが、
次の機会に譲りたいと思います。
皆様にはご拝読いただき、ありがとうございました。
以上
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
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