・楠木健先生の「新時代を生き抜く逆タイムマシン経営」について
◎はじめに
前回、全国経営者大会のすばらしさについて、とても印象に残っているこれまでのいくつかの講演を振り返り、
私なりの感想やためになったことを述べました。また大会のメリットも整理してみました。
経営者の皆さんには、是非これまで以上のご参加をお勧めしたいですし、大会を運営している皆さんには、
これまで以上の強い思い入れをもって、さらに素晴らしい大会を目指していただくことを期待しています。
さて今春(2022.1.26~28実施)の全国経営者大会の講演も、期待にたがわずというか
期待を超えて刺激をもらいとても勉強になりました。特にコロナ禍がすでに2年を過ぎつつある現在、
これからの日本の経営にとってとても重要なことをあらためて確認できた、と言う思いです。
そこで今回は、今春の全国経営者大会の講演のいくつかを挙げて、私の感じたことを述べたいと思います。
前回同様、私の勝手な感想や思い込みですが、この文章を読んでいただける皆さんには、
多少でもご参考になればと思っています。
それで、はじめに楠木健先生のお話について、語りたいと思います。大会の基調講演として、
ぴったりだったなと振り返って思いました。
【楠木健先生の「新時代を生き抜く逆タイムマシン経営」について】
何より一番印象に残っているのは、楠木先生の風貌です。背が高くダンディでスマート。
男性中年雑誌の「レオン」の『ちょいワル親父』風で革ジャンにオートバイに乗っていそうな雰囲気が
ただよっていました。趣味で音楽バンドを組んでいるそうです。
こういう人が経営学者なのかと思え、一般的な大学教授のイメージとは大きなギャップがありました。
正直、自分との違いも感じました。
楠木先生は「ストーリーとしての競争戦略」と言う著書でビジネス書大賞を授与されていますが、
ご自身の普段の振る舞いにも、ご自身のストーリーをもったブランディングを意識されているのではないか、
とさえ思えた次第です。
いや、単にご自身の趣味に正直なだけかもしれません。
それでも楠木先生が、そうしたご自身のかっこよさやオリジナリティを大事にされていることは、
よくわかりました。
「人もビジネスも、自らオリジナルなストーリーもって、ワクワク楽しくやろうよ!」なんて感じでしょうか。
大会では、こうやって、著名な講演者の方々の“生な姿”を拝見出来ることも、とても楽しみであり、
その印象からくる記憶が、あとから振返って、自分の中にいろいろあらたな思いを起こさせてくれることが
あるよう思います。
と、先生の風貌の話はこれくらいにして、先生の講演内容についてお話したいと思います。
私なりに捉えた、その要旨は、次の通りです。
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これまでは、タイムマシン経営などと言って、最新の流行や技術をいち早く取り入れて競争に勝つことが
ビジネスの一番の秘訣のように言われていたが、
本当にそうなのか?流行のキーワードにあまりに振り回されていないか。
「同時代性のわな」と言って、同時代で言われていることが実際にはそうではなかったことも多い。
「論理の不在」「飛び道具トラップ」「手段の目的化」「文脈剥離」にも気を付けたい。
過去が積み重なって今がある。(むしろ)過去を振り返ると、本質がみえてくる。
一つ一つの歴史的な出来事の基底に流れる本質、ロジックをじっくり考えてみること。大局観が大事。
・・そしてビジネスはなにより「他社の出来ないことをやる。他社のやらないことをやる」ことが大事。
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事例もとても参考になりました。
◎アドビのサブスクリプションの事例
「サブスクリプション(定期購読、継続購入)」と言うビジネスモデルがちょっと前に流行ったが、
論理が欠如したまま導入して失敗した例がいくつもあった。服などは典型的な例だ。
アドビが「サブスクリプション」制度を導入して大成功した一番の要因は、
高額システムの一括販売から継続課金方式に変えたことで、顧客にとっての初期導入コストを低額に出来たこと。
そのことで今まで取り込めていなかった中小の新規顧客層を多く開拓できたことにある。
そうした自社のビジネスの課題をしっかりとらえて、その解決のための制度でなければ、
うまくいくわけがないだろう。
◎ネットフリックスの事例
ネット・フリックスは実ははじめは1997年創業のDVDの販売とレンタルの会社だった。
しかしその当時は、DVDレンタルでは、ブロックバスターと言う会社が圧倒的な店舗網をもった強みを誇っていて、
その牙城を崩すのは容易ではなかった。
それまでのレンタルビジネスの勝ちパターンは、新作をいかに大量に買い付けて、高速回転で回せるかどうか。
つまり新作が出た時の市場の盛り上がりに乗じて、短期間にいかに儲けられるかどうか、が決めてになっていたわけである。
でもそうなると、規模の大きな、新作を大量にかつ安く買い付けられるシェアー一番の会社が勝つ、と言うことになってしまう。
そこでネットフリックスは年々蓄積される「旧作」の回転率を上げることに活路を見出すことにした。
その為、お客様がレンタルしたビデオの傾向を一人一人分析して、その人に合った、
新作ではない旧作を推薦するシステムを構築した。(「映画評価・推薦システム(CineMatch)」)
個々のお客様の事情に個別対応するシステムと言え、今までのレンタル業界では、全く考えたこともない発想のやり方だった。
その結果、顧客が見るレンタルの70%が、推奨する「旧作」になったそうである。
ネットフリックス独自のストーリーと言えるだろう。
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流行のキーワードに振り回されている現在の世の中やビジネスに対して、
強く警鐘を鳴らされている姿が印象的で、とても共感を覚えました。
私もいろいろな企業様をお手伝いしてきましたが、経営者の皆さんが最近とみに短期志向になって、
余裕が無くなっているのではないか、と思えています。
社会の変化のスピードが上っていますし、経済の停滞が長く続いているので、
経営者の皆さんの苦悩や焦りは私なりによくわかっているつもりですが、
だからこそ、これからビジネスで成功するためには、長期ビジョンをはっきり掲げ、
大局観とロジックを持った戦略作戦を立てることが重要と、この講演からあらためて思えました。
そこで一言、
「スピードが勝負の時代だからこそ、(人も企業も)時間を掛けなければ身につかない強みが、何よりの武器になる。」
自分もコンサルタントとして、クライアントの皆さんに、あらためて長期的ビジョンと
大局観を持った戦略作戦を進められるようなお手伝いをしていこうと思えた次第です。
そして講演の最後の方で言われた『他社の出来ないことをやる。他社のやらないことをやる』と言う言葉には、
もう25年前になりますが、私の「リレーショナルマーケティング」と言う本で、
ビジネスで何より大事なことの一番として「人のやらないことをやる!」を挙げていて、それを思い出し、
まさに我が意を得たりでした。
ちなみに私の座右の銘の第一は「日々新た、自己革新」です。今もこの心を忘れず頑張っていきたいと思います。
以上
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
講師SELECT 楠木建氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
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