2022年7月1日

第135回(2022.1)全国経営者大会の感想③

その他心に残った講演、平井元ソニー社長及びゑびや小田島社長のお話について・・・

◎はじめに

今夏の全国経営者大会も7月13日からの開催が迫ってきました。
今回もさまざまな素晴らしい講師が予定されていて、とても楽しみにしています。
コロナ禍を超えて、これからどんな社会になっていくのか。
そしてどんなビジネスのあり方が求められてくるのか。
そのヒントを探りたいと思っています。
さて、前回まで今春の全国経営者大会の講演の感想として、
前前回は楠木健先生のお話、前回は藻谷ゆかり様のお話を挙げました。
今回もその続きで、とても心に残った講演として、
一つは、ソニー元社長の平井一夫様のソニー再生を踏まえたとても大事なお話。
今一つは、若手経営者のであるゑびや社長小田島春樹様のデータ経営のお話を取り上げたいと思います。

【ソニー元社長、平井一夫様:「『ソニー再生』のリーダーシップ」について】

まず初めに平井一夫様の印象からお話ししたいと思います。
平井 一夫 写真
世間一般のイメージとしては、ソニーの苦境を一気に転換して新たな成長軌道に乗せた有能な経営者であり、
戦略的論理的で強いリーダーシップを発揮した方、でしょうか。
その上写真で拝見する印象では、とてもイケメンでイギリス紳士然とした雰囲気が漂っています。
一方ソニーミュージックエンターテイメント出身で、
その後アメリカのプレイステーションの総責任者としてその業績を一気に伸ばし、
ソニー本体の再生まで果たされたという履歴からは、
IT系で超合理的ながら、芸術的な感性も持ち合わせた、
ちょっと軟派な遊び心もある人柄かも知れない、と(私は)思っていました。
ところが平井様の実際のお姿を拝見し、ご講演内容をお聴きした後の今では、その印象は大きく異なっています。
一言で言うと、「教会の牧師さん」のような方。とても温厚で、おしゃっていること一つひとつが腑に落ち、
「この世界にとって、また人生にとって」とても大事なことをあらためて確認させていただいたという感じです。
ちょっとオーバーかもしれませんが、実際ビジネスマンより、牧師さんの方が似合うかもしれない、なんて言ったら失礼でしょうか。
たぶん、平井様が持たれている「信念」の強さがそうした印象を与えるのだろうと思います。

で、話を戻して、講演内容に入ります。
「リーダーがすべき6カ条」として次の6項目を挙げられています。
① 正しい人間になる
② 高いIQを持ったトップマネジメントチームを組成する
③ ミッション、ビジョン、バリューを定義する
④ 戦略立案
⑤ 現場に行く
⑥ 後進に道を譲る

何より①正しい人間になる、がとても強く心に残りました。
「このことが一丁目一番地」「人間として尊敬される人になることがリーダーには何より大事」
「リーダーはIQではなく、EQ」と言われ、過去の自分がいかにリーダーとして不足していたか、
胸に強く響きました。多くの経営者やリーダーに響く話と思います。

一方②高いIQのトップマネジメントチームの組成、もとても納得しました。
リーダーにEQ,その下のメンバーはIQを求めるというのがミソと思います。
実際私が過去大きなシステムのプロジェクトをお手伝いした時、E社長が大きな方針と決定を担う中、
若手トップメンバーKさんと私の二人のみでシステム内容をほぼ確定させるとともに、
プロジェクト全体に対して中心的な役割を担いました。まさにIQ的な役割を求められていたよう思います。
その際、色々障害が発生したのですが、どうにかそのプロジェクトを成功させることが出来ました。
そのプロジェクトの成功もあって、その後その会社は当時年商70億円台であったのが、
一気に急成長を果たし5年後200億円を超えるまでなっていきました。
もし他の役員などのメンバーを交えてプロジェクトを組成していたら、たぶん議論が拡散してうまくいかなかったのではないかと思います。
中小企業の場合、IQの高いメンバーは少ないと思いますが、日頃からみんなが何が大事なのかをしっかり考え続け、
それを誰でもオープンに表明でき議論し合える環境を作っていくことが、とても大事と思います。
そうした環境を作る中で、これぞと思う社員は社長自身で育成されることが必要でしょう。
自社のことを深くわかってくれる専門的なコンサルタントを使うのもありとは思います。
但し、最適なメンバーを選択し決断するのは、社長の役割です。

平井様の講演では、その他にも有益なお話がありましたが、紙面の関係でこれくらいにしておきます。

【小田島春樹様「地方の老舗食堂が7年で売上5倍、利益10倍に」について】

次に小田島春樹様のお話です。
小田島 春樹 写真小田島様は、伊勢神宮参道にある老舗食堂「ゑびや大食堂」の若き経営者で2022年現在37歳。
10代から輸入業やECビジネスを手掛けてから、ソフトバンクに入社後、妻の実家の今の会社に入ったそうです。
その経歴から、とても柔軟にビジネスを考えられる方であり、デジタル技術も実践的に活用されているだろうと思いましたが、
実際にお話しいただいた内容はまさにその通りで、とても参考になりました。
顧客データ分析のやり方が、私には特に勉強になりました。他の業界の会社のみなさんにも当てはまるよう思います。
顧客データ分析の主な内容は、次の通りです。
① お店の前の通行人の量と特性を日々実際にデータとして収集し分析する。
② その通行人のうち、どんな人が何人、お店に入ったかまでを確認する。
③ そのお店に入った方が、どんなメニューを注文したのか。
また食べた後、どんな感想を持ったのか?までをすべてデータとして蓄積し検証する。
④ そのデータの結果から、社員みんなで再検討して、次の対策を考え実行する。またその結果をもってデータで再確認して、
より成果の上がるやり方を模索してやり続ける。

実際、店頭の看板での主力メニューの訴求から、広告宣伝、店頭イベントでの商品販売、新メニューの実際の評価まで、
さまざまな売上対策をトライアンドエラーで実施し、その効果をデジタルに測定して、
より業績が上がるやり方をみんなで模索しながら行っているそうです。
例えば、コロナ禍で通行人が近所の若者ばかりに激変した際、すぐに若者向けのインスタ映えするメニューを開発して
チラシを配布したり、片手で食べられる肉寿司等を開発して店頭販売。あるいは生ビール半額券の配布等々をおこなったとのこと。
その結果、業績もかなり回復することが出来たばかりか、次につながる新しい発想も得られたそうです。
そうした新しい対策は、デジタルなデータを社員みんなで共有して、みんなで一緒に知恵を出し合いトライしている、とのこと。
そのことが何より大事、とお話を聞いていて思いました。
ゑびや 看板
また「ゑびや大食堂」さんでは、「少しでも高い給与をあげられる会社をつくる」ことを目指していて、
その実現のために、次のようなことも意識して行っているそうです。
① 社員教育を徹底して、レポートまで提出してもらっている。(みんなの給与を上げる為が理由)
② 社内のパソコンオタクに徹底して勉強してもらって、自社のソフトの運用を任せている。
③ 支配人は高校中退の出戻り社員。戻ってこられる会社、学歴関係ない会社である。

平井様のお話もそうですが、経営者が社員のやる気や能力をいかに引き出して行くのか、
そのことが何より大事と改めて思いました。DXはあくまで手段であり、社員がのびのびと活用してこそ、
成果に結びつくものと思います。

小田島様のお話には、実際に実行されていることで、とても参考になることがまだまだいろいろありましたが、
これくらいにしておきます。

全国経営者大会に実際に参加して、講師ご本人から貴重なお話を直接お聞きすると、お話の内容以上に、
体験からくる得難い知恵をいただいていると実感します。
是非皆様にも、全国経営者大会に参加されて、そうした得難い知恵を自社の経営に役立てていただけたらと思います。

⇒変化多様化が激化する時代だからこそ、(振り回されないために)
1)大局的に(時間空間に広がる)全体を見る癖をつける。
2)変化多様化のメカニズムをとらえて、変化多様化の先を見て作戦を立て、最新の今を押さえ、柔軟に対応できる体制をつくる。
3)変化多様化するからこそ、ブレない軸、ビジョンとポリシーをしっかり立てて、価値あることを積み上げていく。

以上

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

講師SELECT 小田島春樹氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)

講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)