2023年11月28日

経営も一緒!トップリーダーのぎりぎりの覚悟と判断が勝負を決める

経営も一緒!トップリーダーのぎりぎりの覚悟と判断が勝負を決める

~第138回(2023.7)全国経営者大会の感想③-1~

講演タイトル:
【元WBC監督:栗山 英樹氏
タイトル:名将「栗山英樹」が指導哲学を熱く語る】

◎はじめに

さて、今夏大会の感想文も第3回目です。これまでお二人の講演の感想を述べましたが、
その他とても印象に残ったいくつかの講演についても是非触れたいと思います。
初めに取り上げるのは、2023年WBC日本代表「侍ジャパン」監督の栗山 英樹氏のお話です。
栗山英樹氏
栗山監督のお話は、テレビ、YouTube、書籍等、さまざまな媒体を通して伝わっていますので、
ご講演内容のいくつかは以前お聞きした内容ではありましたが、
実際に栗山監督のお話を会場で直接お聞きすることで、あらためてあのWBCでの感動がよみがえってきました。
それは、栗山監督がその時のご自身のお気持ちを振り返って、そのままお話しているからと思います。
一期一会のとても深いお話ばかりで、あらためてジーンと心を動かされた次第です。

◎ダルビッシュを決断させた殺し文句

栗山監督は、WBCの監督になられて、まず次のように考えたそうです。
「過去の監督時代は、『結果を出すこと』と『チームの選手が成長していくこと』を重視していた。
しかし今回の場合は、次のように考えを切り変えた。
1)ジャパンが、どうやって(短期決戦の一回も負けられない)試合に勝つか
2)『こういうチームなら、是非出たい!』と選手が思える部隊をどうつくるか
( 2)に関して言うなら、そこまでいかない雰囲気が実はこれまで球界にはあったそうです。)
そのために中心になる選手をどうやって呼ぶか・・。チーム編成でかなり決まってしまう。
そう考えた時、大谷はもう決まっている、と言う前提にしたら、なによりダルビッシュが決め手になる。・・」

そこまで考えた訳ですが、ダルビッシュには今まで接触していたのものの、
参加してくれるかどうか不明だったそうです。
そこで、ダルビッシュは単に優秀と言うだけでなく、
徹底して野球を研究してノウハウを蓄積している稀有な現役選手なので、そのことを説得の肝に置くことにした。
それで、次のように話した、とのことです。
「勝ち負けもあるけど、あなたの持っている野球のノウハウを若い選手たちに伝えてくれたら、
日本の野球界ももっと発展するよね!」
私はこの言葉を、ウ~ンさすが、すばらしい、と思いました。優秀な志をもった人にこそ刺さる殺し文句と思います。

それから、栗山監督は彼に直接会ってそのことを伝えた後は、一回も連絡を入れず、答えを待ったそうです。
それが人を信頼する、と言うことだと思う、と栗山監督は言います。
このお話も、ザクっと胸に刺さりました。
自分がそこまで人を信頼することを突き詰めて考えて行動しているかどうか、反省した次第です。
それで・・実際には、ダルビッシュは米国野球界のルールが厳しくて、WBCに参加するのがとても大変だった。
そのことをわかっていたので、彼を信じて待つしかなかった。断られても全く仕方ない状況だったとのことです。
彼はそのルールの為、実際の試合寸前まで練習試合にも出られずに、
万全でない状態で本番のマウンドに上がっていたのは、皆さんご承知の通りです。
また、ダルビッシュが積極的に自分のノウハウをみんなに教えただけでなく、
ご自身が中心になって若い人達をまとめていったことが、どれほど優勝に貢献したことか、
今回の栗山監督のお話からもよくわかりました。

◎怪我をした源田選手を起用した理由とは

と、こうやってお話を思い出しながら書いていると、どんどんきりがなくなっていきますので、
あと一つ、とても印象に残って、とても為になったお話を挙げましょう。
それは怪我をした源田選手を起用するかどうか、栗山監督が判断した際のお話です。

源田選手は、指の骨折をして握ったボールが滑ってしまうため、
ショートの守備をするのがきつい状態になってしまいました。そこで栗山監督はそのケガの状態を確認するために、
はじめに城石コーチに電話したそうです。城石コーチは、難しい状況の際に、監督が正しく判断するのに、
いつも的確な情報を上げてくれる、とても信頼しているコーチとのこと。
ところが、その時の城石コーチの発言がとても微妙で、
「いやあ~」と言ったうえ、「(本人は)指は大丈夫です、と言っています」と言う言い方をしたそうです。
源田選手本人の言葉をそのまま言ったということは、
(ダメかどうか)監督が直接判断してくださいと言う意味だなと思い、
一方で源田選手は「指一本残っていれば、何とかなります、」と言っているので、
栗山監督はそれから直接本人にあらためて確認したそうです。
そしたら本人は、「痛くないですよ。・・僕は絶対やります!」と強い覚悟を示してくれた、とのこと。
この辺の、人と人との微妙なやり取りが、とてもリアルでイキイキしていて、
その時の情景が目に浮かび、本当に聞き入ってしまいました。

それで栗山監督は、「(チームメンバーの中に)いざという時に、
仲間のため人のために頑張れる人間を作りたい」と以前から思っていたので、
彼の「絶対に引かないという魂の叫びを感じて、この魂に賭けたほうが勝てる!と思った。
それで彼には「怪我したことを忘れて、使うからな、いいな!」と言って、
その通りの使い方をして、結果として大活躍をしてくれた、とのことです。

熱き組織を作るためには、
たった一人でも(人の為、チームの為と)覚悟をもった燃えるメンバーのいることが、何より大事。
そのことをこの話から実感しますし、また、そうした燃えるメンバーを作るためには、
すべての責任を負ったトップリーダーのギリギリの覚悟と判断が大事ということもよくわかって、
とても共感するお話でした。

その他、ダルビッシュ、ヌートバー、大谷のことについても、
印象に残るお話をいろいろお聞きしましたが、これくらいにしておきましょう。
最後に、「大谷もダルも、やるかやらないかで動いている。(やると決めたら・・徹底してやり切る)、
自分を限定しない。」とおっしゃっていました。
この言葉も、本当に経営に通じるなと思いました。
と言うことで、前篇はこれくらいにしておきましょう。
後編は、「銚子鉄道の逆境を乗り越えたお話」など、その他印象に残ったご講演の話をしたいと思います。

後編へ続く

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)

講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)