藤沢 久美氏のご講演―経営者の言葉、決断の大事さ…あらためて深く納得!(全国経営者大会にて)【前編】
~今夏(2024.7)大会講演への感想として②―1(前篇)~
はじめに
全国経営者大会の感想として、次にご紹介したいのが大会の最後を飾った藤沢久美氏のご講演です。
藤沢様については新聞や雑誌等でお写真では拝見していたよう思いますが、
ご活躍内容は存じ上げませんでした。ご経歴では、「1995年(若くして)日本発の投資信託評価会社を起業」
「2007年にはダボス会議を主宰する世界経済フォーラムで『ヤング・グローバルリーダー』に選出され、
翌年には世界の課題を議論する『グローバルアジェンダカウンシル』のメンバーに選出され、世界40か国以上を訪問…」
「2022年4月からは…国際社会経済研究所 理事長」をされているとのこと。ちょっとビックリです。
そんなご経歴から、「超優秀で歯切れがよく、外交的で積極的な(少々常人離れした)人物」を想像してしまいましたが、
ご講演でのお姿は、(私の勝手な表現ですが…)「むしろ清楚で落ち着いていて、人の話を受け止めるのが得意な、
共感力の高い…普通の方(美人)」と言った印象でした。それで正直ご講演には強い関心を持って
臨んだわけではなかったのですが、お話が進むうち、どんどん引き込まれてしまい、ご講演が終了した時には
「本当にいい話が聞けて良かった。今大会の最終講演にふさわしい内容で、堪能した!」と思えましたし、
気持ちが高ぶってしまい、近くの他の参加者の皆さんにも、そんな気持ちをお伝えしてしまったくらいです。
聴講されている他の皆さんも同様の様子で、「いやあ、これまでの(女性の)講演で、一番論理的で奥が深い内容だった!」
などとおっしゃっておられる方もいたくらいです。
「女性」はともかく、とても奥深い内容だったことは間違いないと思います。
お話の仕方としては、挑発的な言い方は無論の事、強い口調や強調的な言い方は全くなく平易な言い方を
心掛けていて、とても易しく穏やかで安心して聞けたことも そうした深い満足につながったのかもしれません。
それで、今この感想文を書くにあたり藤沢様のお話を振り返ってみると、
その内容は今まで聞いたことがない全く新しい考え方や知識、ということではなかったと思います。
しかしなにより、これまで自分の中にあったあいまいな思いや知識を「やっぱり、そうだよね。そのことが大事なんだ!」
と、はっきり確かなものにしてくれたと思いますし、さらには、経営者のありかただけでなく、
これからの自分の人生のありかたについても、何か深い確信を与えてくれた、よう思えます。
前置きはこのくらいにして、実際にどんなお話だったか、振り返っていきましょう。
講演タイトル:《総括》不確実な時代に求められる経営者のリーダーシップ 今どきの若い社員は何に飢えているのか?
藤沢久美氏 (国際社会経済研究所 理事長)
-経営者は、何より“言葉”を大切に!―
講演のはじめにお話されたのは、経営者にとっての言葉の大切さでした。
社長の方々には、本当に(社員の皆さんに社長の)真意が伝わっているのかどうか、を振り返って欲しい。
社長は年を重ねる中、ご自身の言葉に経験が積みあがった思いや意味が形成されているが、
大きく時代が変わってきている現在、言葉だけでなく言葉の行間にある意味自体が大きく変わってきている。
自分と言葉を受け取る側とのズレを考えることが必要になっている。
そのため、一つ一つの言葉の意味を(より深く)考え、言葉の定義を分解して、
他の言葉に置き換えて語ることをしてほしい。例えば、「変革」と言う言葉も、
聞く人によって(どうとらえたか)答え方が異なっている場合が多い。前向きに新しいことにチャレンジする、
と捉える人もいれば、自分達がこれまでやってきたことを否定しているかのように受け止める人もいる。だから…
キーワードの連呼で済ませるのではなく、言葉を受け取る人達一人一人の気持ちを想像して、
丁寧に自身の真意が伝わるような言い方を心掛けてほしい、とのことです。
私にはここから話をはじめるのか、と言う感じでしたが、後から振り返ると、これまで多くの経営者にお会いし、
またその社員さんの声を多く聴いてこられた藤沢様の実感が強く込められたお話だったな、と思います。
「言葉の大事さ」については、経営者だけでなく、まさに経営コンサルタントにも当てはまる話であり、
受け止める相手の皆さん一人一人のことを深く考えて語ることの大事さをあらためて反省した次第です。
藤沢様ご自身、この講演でのご自身の言葉をとても意識しながらお話されているよう思いました。
―決めること:経営者のリーダーシップ①―
ここから次に「経営者のリーダーシップ」についての本題に入る訳ですが、
最初に挙げていただいたのは「決めること」でした。
誰も正解がわからない未来について、最終の決断をしてくれる人、それが経営者。
その際どんなリスクがあるか、までを想定して決めなければならない。
そして(そのリスクを負いながら、未来へ向けて)動いて行かなければならない。それを決断できるのは経営者のみ。
ダボス会議では、日本企業の存在感が(一部に例外はあるものの…)あまりに少ない。政治に関してはなおさら。
それは「決められない日本」になっているからではないか。決めることは、責任を持つこと!
(決めることをしてきた)優秀な経営者は、とても繊細で心配症。
常にどんなリスクがあるかと日々考えている。でも実際に決断する時は大胆に見える。
そして誰よりも動いている。一方今の日本の場合、残念ながら大企業の役員でも
決められない人が多い(よう見える)。以前ある経営幹部の方から
「自分の寝首を掻こうとする者がいるが、どうしたらいいか?」と相談を受けたことがある。
その時「あなたが大きな決断をし、実行するために常に真剣に考え続けているなら、
その迫力でそうした者もたじろいでしまうはず。そんな心配をするより決断に集中すべき!」と言った。
また話は変わるが・・日経新聞の「私の履歴書」で、これまで一番多く使われた言葉は何か?
それは「たまたま」と言う言葉。結局100%の確証がない中、決断し実行していくことで、
結果としてたまたま「運」を掴んだ、よう思えるという事ではないか。
ずっと(一心に)考え続けていることが、実は「運」をもたらすということだろう。
例えば、アメリカで10ドルの床屋が流行っていることからヒントを得て、
日本でそのビジネスを展開したいと思った経営者の話。そのことを決断し実行方法を
真剣に考えることになったとたんに問題意識が高まり、普段読んでいる雑誌や新聞記事からでも
有益なビジネスのヒントが得られることがわかったそうである。1000円の床屋を運営するのに、
出来るだけ従業員にはお金を扱わせたくないと思っていろいろ対策を考えていた。
そしたら、たまたま新聞記事で1000円札の交換機の機械が余っていることを見つけ、
その余っている交換機を使って、1000円の床屋券を発行することを思いついたとのこと。
そのことは1000円の床屋を成功させるためにはとても大事な対策だったそうである。
だから、あらためて決断すること。そして決断して実行するため考え続けることが、
経営者がリーダーシップを発揮するために、なにより大事と言いたい。
以上の内容でしたが、経営者にとって決断が大事、と言うことは、いろいろなところで言われているわけですが、
「(未来へ向けた大きな)決断をすることで、なにより真剣に考えることが出来るようになり、
そのことによって(はじめて)その決断を成功させるための方法論も見えてくる」
という主旨のお話に、とても納得しました。日本の社会自体が、「(未来へ向けた大きな)決断をしないために、
新たな方法論が見つけられない。新たな方法論が見つけられないために、決断できない(ままズルズル…)」
と言う悪循環に陥っていると思え、「経営者の決断」が今こそ大事な理由があらためてよくわかりました。
そしてその決断には、なにより“信念と勇気”が必要なことも、思い至りました。
(実は経営コンサルタントの一番の弱点は、この「(経営者の)決断の責任の重さ」を実感していないことでしょう。
経営コンサルタントは「責任が無い」からこそ、しがらみなく冷静なアドバイスができる訳ですが、
その時“(経営者の)決断の重み”に対せるだけの真摯な覚悟がなければならない、とあらためて思えた次第です。)
―未来を指し示すこと:経営者のリーダーシップ②―
次に経営者のリーダーシップとして挙げられたのが「未来を指し示すこと」でした。
この順番がとても意味深いですね。普通であれば、「ビジョンを描く」ことが先で、
その上での「決断」と言う順番かと思いますが、今述べたように「決断」と言う「己の意思を固める勇気」が、
先に大事になるという事。この順番の違いに藤沢様の深い思いがあると、この感想文を書いていて、
今回ようやく気が付いた次第です。この「未来を指し示すこと」については、次のようなお話をいただきました。
不確実な時代だからこそ、「ビジョン」や「思い」と言った、揺るがぬものを持つことが何より必要になっている。
自分で決めたことを(表に)出してみるしかない。自分で決めて自分で発信する。
そこから本当の答えを見出していく(行動をしていく)。
また同時に、そのことで一緒にやってみたいと思える人達を集める(集まってくる)。
自分の場合小学2年生の時、自分が死ぬこと以上に自分が死んでも世の中が続いていくことにショックを受けた。
そして自分が死んだあと世の中がどうなっていくのかを分析して予測したいと思ったことが、
大人になってアナリストと言う職業を選ぶことにつながった、と思える。
但し、アナリストになって分析して未来予測しても、未来を当てることは出来ない。
未来とは、自分がそうなったらいいな、と思えることを実現していくべきもの。
『未来を予測するには、未来を発明することである』と言う格言さえある。
大企業の場合、すべてにわたって動くのが遅いが、皆さんのような中堅中小企業の経営者であれば、
ご自身の選んだ未来の実現する可能性は、きっと高いはず。
是非未来を指し示して、社員のみんなを動かしていって欲しい、・・と思います。
以上の内容でしたが、「まさにその通り!」と納得しましたし、ご自身のことを実感をもってお話したことで、
より共感が増したよう思います。不確実な時代だからこそ、「未来を指し示すこと」の大事さは
強調してもしきれないぐらい大事!とあらためて思いました。
―育てる:経営者のリーダーシップ③―
そして経営者のリーダーシップとして挙げられた3つ目は「育てる」でした。
決めて未来を指し示しても、それは経営者一人では実現できない。
「思い」と「能力」を持った人達が必要になる。その人達を育てる。
但し、そうした思いや能力は一方的に押し付けても身につかない。自分でそうなりたい、
成長したいと思わないといけない。一人一人の社員に自分でそうなりたい、成長させたいと思わせることが、
今経営者のリーダーシップとして必要になっている。
このお話は、さらっとおっしゃっていましたが、とても重い内容と思います。
単なるテクニカルな能力ではなく、ビジネスへの熱い思いをベースに、
その思いを現実の世界で実現させるための精神的なものも含めた高い能力が、経営者だけでなく
社員メンバーにも必要と言うことになるでしょう。それも、“自らの意思”でです。
実はこの文章はパリオリンピックの開催後、その戦いの熱気が残る中で作成しているのですが、
オリンピックに出て金メダルを獲得するまでの選手を見ていると、最高レベルの技術能力は必須ながら、
自ら最高難度に挑戦し、予測を超えた難しい状況に置かれても、自らの能力を最高レベルで発揮して
それを乗り越え 目標を達成していける、それだけの高い精神力を身に着けている人達であることがわかります。
未来へ向けてビジネスを進めて成功させていくには、同様に高い精神力と能力の両方が必要になっている、
と暗に言っているよう私には思えました。人を育てることの大事さ。そして“自らの意思”の大事さ。
さらには、そのために求められる「経営者の器の大きさ」をあらためて確認した次第です。
後編へ続く
(―経営者に求められる7つの能力―その他)
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
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講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)