2015年6月2日

【平松陽一】人と仕事と仕組みの『スリーバランスセオリー』 31

スリーバランスセオリー


31.商品力は計数で把握できる

商品力の低下は、限界利益(粗利益)に出る。変動費の意味について考えてみることだ。
固定費が組織にかかわっていることは事実だが、変動費の部分が企業の収入を上げるための
組織の動き方が読み取れる。
何と言っても、業績を上げるための一番簡単な方法は、値下げをすることである。
だから、競争相手とのやりとりの中で、つい実施しまうのが値下げである。

マネージャーが考えなければならないのは、安易な値下げをさせないことであるが、これが難しい。
それは、部下から競争が厳しくて、利益がとれないという言葉を聞くからだ。
値下げをしたからといって、直ぐにその結果が損益に表れるいうことはない。
初期の段階では、値下げ金額が少額であるために、損益に表れる程ではない。
ところが、少数点以下のレベルで何となく落ち着いてきている時はいいが、
これが1%・2%となった時には、もう遅いということになるのである。

私の関係先でライバルとの受注競争に敗れた原因を調べたところ、一番目に多かったのが価格差であった。
ところが、それを詳しく調べたところ、その殆どがどれ位の価格差で負けたのかということが
わからなかったということがあった。
更に詳しく調べたところ、粗利益が取れない原因は、単に値下げだけではなく、
原価が上がってしまっているということにもあった。
例えば、値下げを抑えるようにと上司から指摘されると、顧客に対応するためには、納期を早くしたり、
納品数量が少なくても対応するということが行われる。これにより、限界利益が低下することとなる。

私の関係先では、粗利益が出ているので、それなりに支店を評価していたが、支店を訪問してみると、
倉庫の中に在庫が山となっているということがあった。これは、顧客のニーズに応えるために、
大量仕入をして安く提供し、そして在庫を抱えるということになっていたのである。
そこでこれに対応するために、しくみとして限界利益に金利を入れるようにした。
更に、半年在庫しているものの半分を不良在庫として帳簿から外し、更に一年後には薄外商品として
処分してしまうというこをしたのである。当然その分は利益から引くこととなる。
このしくみを入れることにより、仕事の見直しをしなくてはならなくなった。
これまでは、納期はいつでもどうぞ、少ない数で注文してくださいという営業活動を進めてきたが、
それを根本から見直さなければならなくなった。
つまり、損益というしくみを変えることにより、仕事・人の見直し、調整をしなくては
ならなくなったのである。


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