やんちゃ番長が野球部監督?!花巻東、佐々木監督の明るく、かつ真摯な人柄に魅了されました!
~第137回(2023.1)全国経営者大会の感想①-1~
◎はじめに
コロナ禍も3年以上経過し、ようやく収束に向かいつつあると実感できるようになってきました。
これまでにない新しい社会がこれから訪れるのは間違いないでしょう。
転職市場がとんでもない活気に沸いているそうです。
私の周辺でも、将来を見込んだ人材の流出に頭を悩ます一方、
新たに獲得した人材に希望を見出しておられる企業様が何社もおられます。
これからは、新たな人材活用による、新たな発想でのビジネスへの取り組みが、
次の成長発展の成否を決めるよう思います。
その際、大事なのは「変わること、変わらないこと」を見極めること。
今回の大会も、大変ためになる講演が数多くあり、
私にとって、その「変わること、変わらないこと」を改めてじっくり考えさせていただく契機になりました。
まことにありがとうございました。
各界で現在活躍されている著名な講師の方々のお話を、
文章や動画ではなく直接”生“でお聞きできることが、なにより貴重で得難い体験と思います。
そこで、今大会で一番強く印象に残ったご講演の感想から、お話したいと思います。
◎佐々木監督の講演の概要
人柄について・・明るく奔放なやんちゃ坊主がそのまま大人になったような方
講演タイトル:
《特別講演》世界に通じる逸材をどう育てるか。
大谷翔平、菊池雄星育ての親が語る―
【花巻東 硬式野球部監督 佐々木 洋氏】
佐々木監督の印象を一言で言えば、明るく奔放なやんちゃ坊主がそのまま大人になったような方。
一方で「何が本当に大事なことなのか」に常にこだわり、
自分の使命を果たそうとする生真面目で誠実な性格を持たれており、
周囲の人達がその人柄に魅入られて自然に集まり、
知らぬ間にリーダーとして祭り上げられてしまう、そんな方ではないかと思いました。
会って一緒にいるだけで嬉しいし、楽しくなれる、またついて行きたくなる。そんな稀有な方と思います。
実際ご自身のお話ですが、
「中学時代は髪を前に突き出した『番長』だったけれど、先生に言われて(髪も直して)生徒会長になった」そうです。
それだけ周囲から見ても、突出したリーダー的な存在だったのだと思います。
はじめの話の入りが、
「お話をいただいた時は、会場が帝国ホテルですし、
(花巻のことを知らない)はじめての方ばかりだからいろいろ遠慮せずに話せる、
なんてとてもテンションが上がっていたのですが、
参加者の中に花巻のお偉い方々も参加されていることがわかり、
一気にテンションが下がってしまいました。」・・でした。
その時「えっ、こんな“つかみ”から入るなんて、なかなか出来ない。
お話慣れしているし、きっと話好きな方だろう」と直感的に感じたのですが、まさにその通りでした。
その後の話の続きも秀逸です。
「タイトルは、私が考えたわけではありません。勝手につけられたんです。
そもそも、人を育てるのは簡単ではありません。
自分にそんな能力があるなら、大谷や菊池のような選手が何人も出てきておかしくないでしょう。
そうなっていない。人を育てるのは簡単ではない。
もしかしたら、私が殺してしまった選手もいるかもしれません・・・」
ぽろっと言われる言葉に、深い含蓄を感じた瞬間でした。
それからすぐに野球部監督になられた前後のお話がつづいたのですが、
とても印象に残る内容でした。
整理すると、次のようになります。
(※私の意訳ですので、勘違いや聞き違いがあったらご容赦願います。)
内容について
【佐々木監督ご自身の逸話として・・「お前が選手を邪魔している!」】
・新聞広告を見て、花巻東高校の監督になった。はじめはバトミントン部の監督。それから野球部監督へ。
その時、部員11名。
・最初の年に県のベスト4に入って有頂天。しかし次の年に新設高に負けて“クビ”を覚悟。
・どうにかつながり、自己反省し、厳しく言ってくれる恩師を呼んで、
いろいろアドバイスをいただくことにした。
監督としてカッコいいところを一生懸命見せたつもりだったが・・・
・「お前が選手を邪魔している!」と一喝され、がっくり。いつも厳しくしか言わない恩師!
そして、
1)選手に練習メニューを決めさせろ!
2)経営を学んで勉強しろ!
とアドバイスを受け、その実行をチェックされた。
・1)については、選手に考えさせたが、当初は楽な練習ばかり。
でも試合に負けたりミスしたりして悩んでいるところで、「こうしてみたら・・」と下手にアドバイス。
あくまで選手自身が自主的に考えてやるという形をとった。
そうすると、彼らの考えるレベルが徐々に上がっていったし、やる気も大きく違っていった。
・2)はこれまでのように野球の講習会に出るのはやめて、
経営の勉強会に積極的に出席したり、経営の本をいろいろ読んだりした。
・経営でいう「顧客」は、野球では「親」。
なので親が望んでいることを想像して、「六大学か国立大学にはいれる生徒をつくる」。
また「企業の求める人材を育成する」と言う目標を掲げることにした。
実際、野球部のある生徒を意図して勉強に向かわせ、学校ではじめて、国立大学への入学を実現させることが出来た。
・一方マーケティングとして、かっこいいロゴマークを作ってブランド化を推進。
自分個人で2万円で買ったので、人気が出た後10万円で買いとってもらった・・。
等々、書いているときりが無くなりますので、これくらいにして。
「お前が選手を邪魔している!」と言う言葉が、とても印象に残りました。
素晴らしい恩師だな、と思います。
独自で本質をついたアドバイスも、すごい。そうした恩師がおられて親密な交流がされていたこと。
また、ご自身の反省に基づいて、その恩師をわざわざ呼んでアドバイスをいただくという行為には、
佐々木監督の真摯で謙虚に物事に取り組む姿勢、
それに、ためらわず思い立ったらすぐに実行に移す行動力、が端的に表れているよう思います。
恩師と佐々木監督に共通しているのは、「何が本当に大事なことなのか」に徹底して執着し、
そこから(常識や過去の慣例にとらわれない)答えを出す姿勢と思いました。
その共通の姿勢、価値観によって、お二人には深い信頼関係が生まれているよう思います。
こうした上下の関係を超えた、深い人間的な信頼関係は、本当にうらやましいと思います。
「マーケティング的に野球をとらえる」ということ
ところで・・
「お前が選手を邪魔している!」と言う言葉は、
実は社長さんや優秀なリーダーの方にも時に当てはまるのではないでしょうか。
特に、現場に強い(とご自身では思われている)社長さんやリーダーの方の場合、
部下の仕事の仕方を見ていて、歯がゆくなって直接指示してしまうとか、自分でやってしまう。
あるいは現場の状況をしっかりとらえないまま、
勉強してきたことをそのまま自社にあてはめて、それを押し通そうとする、
と言った事があるよう思います。
そうなると、社員さんはただ言われたことをやるだけ、とか、
表面的にはハイと言うものの何も納得していない、となってしまいます。
当初の花巻東の野球部のメンバーもそんな感じだったかもしれません。
一方で、そのことを戒めすぎて、気になる事でも何も言わずに、
我慢してしまっている社長さんやリーダーの方も意外に多いよう思います。
そのいずれでもダメ、と言うことを、
佐々木監督にはご自身の厳しい体験の反省からお話していただいたと思えました。
会場でお聞きになった経営者の皆さんも、そんな感想をお持ちになった方も多いのではないでしょうか。
また、マーケティング的に野球をとらえる、と言う視点もとても斬新で、
佐々木監督の柔軟な発想力が垣間見えるお話でした。
こうしたご自身の体験からくるお話からはじまって、
講演の中盤以降は重要なキーワードを中心にお話ししていただきました。
その内容は後半に述べたいと思います。
後編へ続く
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)