2023年9月5日

業績好調のベンチャー女性社長が劇的に組織文化を改革した手法(前編)

業績好調のベンチャー女性社長が、超真っ暗な社内アンケート結果にショック。
劇的に組織文化を改革した手法とは!

~第138回(2023.7)全国経営者大会の感想①-1~

◎はじめに

コロナ禍もようやく収束に向かいつつあるものの、
実感として正常な状態に入ったとは思えないというのが、多くの方が感じるところではないでしょうか。
大幅な円安やウクライナ戦争の長期化等による急激な物価上昇が続いており、
コストアップ・人件費アップが、経営者にとっては、とても頭の痛い問題になっています。
それと共に、人材不足が深刻で、経営の限界にさえなっている会社さんも多いとのこと。
“経営者はつらいよ”なんて言葉も聞こえてきそうな、今日この頃です。

でも、そのつらさを乗り越えていく先に、自社の次のビジネスの姿が見えてくる。
仙台育英の須江監督の言葉ではないですが「人生は、敗者復活戦」。
光と影、失敗や障害があるからこそ、自らのオリジナリティが生まれ成長発展できる。
人生もビジネスも一緒!
「不況、なお良し!」
むしろ今こそ、チャンスと思います。

そこで、これからどんな社会が現れてくるのか?なんてはじめ思ったのですが・・・。
いや、そういうこと以上に、自社がどんな素晴らしい未来を作り出したいと思うのか。
そのめざす素晴らしい未来の社会の実現のために、自社のビジネスを先手先手で進めていく。
そうした熱い思いを持った覚悟と言うか、構想力と実行力が、今こそ経営者には必要だ、とあらためて思います。

今回の大会も、そうした構想力や実行力を高めてくれる、とても刺激的な講演がいっぱいありました。
そこで、今大会で私が一番刺激を受けた講演の感想から入りたいと思います。
独自化粧品の開発販売を行っているランクアップの創業社長である岩崎裕美子氏のご講演です。
分科会でのご講演でしたので、聴講された皆さんは数十名だったと思いますが、
本当に今回大会参加された皆さん全員に是非聞いてほしい内容と思いました。
お話されたおいしいところを私のつたない感想文で少しでもお伝えできればと思います。

◎岩崎裕美子氏の講演

岩崎社長のご印象と、ベンチャー経営者の壁について

講演タイトル:
【ランクアップ 代表取締役社長  岩崎 裕美子氏
《分科会講演》 タイトル:挑戦する組織の作り方とわが社の成長戦略 】

岩崎社長は、とてもオープンでざっくばらんなフランクな方であり、ご自身のお気持ちをどんどん表に出しながら、
まわりの人達を巻き込み、ご自身の目指すことにまい進する、まさにベンチャー経営者にぴったりの方ではないかと思います。
但し、そうした優秀な経営者の場合、ご自身の圧倒的な意思力と深考力、さらには実行力が、
逆に社員を疲弊させてしまったり、置いてきぼりにして不平不満をつのらせてしまう、
なんて事も、よく見られますし、それがベンチャー企業の命取りになることも、よくあることと思います。
自分についてきてくれると思っていた社員達が、実は離反状態になっていた、
と気づいた時の経営者のショックは、なんとも言い表せない、人生観を変えるようなショック、と言っていいでしょう。
経営者として社員たちのことはそれなりに考えていたと思っていたなら、なおさらです。
でも、そのショックをしっかり受け止めることこそ、次の飛躍のきっかけになる、と私には思えます。
なぜなら、そのショックこそ、他者から見た自分や自分の振る舞い考え方を客観的に捉え直すきっかけになり、
今までの自分と自分の会社を抜本的に転換させ、飛躍させることができるからです。
社長と社員は全く違うことに、あらためて気づく。
そして、それぞれの社員の良さを発揮させて活躍してもらえるようにするのは、すべて社長の役割(責任)。
そのことを自覚して、そのためのさまざまな施策を多角的に徹底して行っていく。

ベンチャー企業が創業から次の飛躍のステージに入るためには、創業社長にはこのことが何より重要と思えます。

と言うことで、これから岩崎社長のお話に入りたいと思いますが、
大いなる気づきを得られとても勉強になったところが、2つあります。
一つは、創業の意図とそこでの行動力。
今一つは、自社が暗黒な組織になっていることに気づいた際の社長のショックの大きさと
そのショックを乗り越えて会社を大転換させた方法です。
前者の話から入りましょう。

ランクアップ創業の経緯と経営理念の関係

岩崎社長は、広告代理店で営業本部長として昼夜を問わず働き詰めの不規則な生活を続け、ご自身の肌がボロボロに。
35歳の時ですが、ご自身曰く40歳台に見えるほどだったそうです。
また、このままの勤務状態では出産も出来ないと限界を感じて退職されたとのこと。
そこで「(自分が)安心して使えてキレイになれる、理想のクレンジングをつくるため。
そして、ライフステージの変化があっても活躍し続けられる職場環境をつくるため」現在のランクアップを設立した、そうです。
創業の意図が、岩崎社長ご自身の人生のヒストリーとピッタリ重なっていて、とても説得力がありますね。
ご自身の肌がボロボロになっても、自分で化粧品を作ろうと思う方はほとんどいない、と思いますが、
岩崎社長はそこに何らかのビジネスチャンスがあると直感的に感じられたわけで、さすがと思います。
実際多くの方からは、今更化粧品会社を作るなんて、と反対されたそうです。
ご自身としては、これまでの「メイク落とし」の化粧品は、洗剤で汚れを落とすようなことになっていて、
その洗剤が肌を痛めていることがわかり、それなら、洗剤を使わないメイク落としを作ればいい、と思ったそうです。
当初は、自分がこんなに悩んで困っているのだから、と言う思いが強かった、その思いが先だったとのこと。
ところが、「たった一人でも自分が欲しいものを作る!」と思いついたら、
自分以外の多くの人達も求めている、ことに気づいた、ともおっしゃっており、
ランクアップの経営理念「たった一人の悩みを解決することで、世界中の人達の幸せに貢献する」と言う言葉に、
そのことがそのまま表現されていることがよくわかりました。

革新的な新製品を生み出す、驚きの実行力

それで、そうした熱い思いまではわかるものの、実際にそれを実現するのは、とんでもなく大変なことです。
ではどうやって、納得できる製品をつくったのか?
そこで岩崎社長は、片っ端から市販の化粧品を買ってきて、そこに記載されているメーカーに何十社も電話を掛け、
そのうち何社か会ってくれる先があって、さらに作ってくれる先をようやく一社見つけたとのことです。
元の広告代理店でテレアポは慣れていたので、電話して断られる事には全く動じなかったとおっしゃっていました。
確かに、私もテレアポを中心に営業されている会社をお手伝いしたことがありますが、
一日100社くらいは平気で電話を掛けますので、断られる事には慣れている、と言うお話はよくわかります。
但し、その時の話の仕方で、かなり結果は違いますので、
化粧品メーカーにかけた電話で、どんなお話の仕方をしたのかはお聞きしたかったと思いました。
とはいえ、その世間の常識を超えた行動力はさすがだな、と思え、
それだけの実行力が何より大事とあらためて思えた次第です。
現在はネット社会になって、そうしたメーカーや商社さんの情報はオープンに収集できますので、
新しい発想での新たな関係先を開拓する活動は、よりやりやすくなっています。
現在新たなビジネスを立ち上げるべく試行錯誤しているみなさんは、是非岩崎社長の行動力を見習って、
とりあえず行動してみてはと思います。もちろん、私自身も大いに啓発された次第です。

さてそうやって、特定の悩みをもった人にとっては、何より魅力的な特徴のある新商品が生まれことで、
そこに岩崎社長の発想力と営業力が合わさって、創業から一気に急成長することが出来ました。
2005年創業ですが、7年目で年商50億円を超えたそうです。
(ちなみに、現在創業18年目で、年商110億円を超えてなお成長しています。)

ここまでは万々歳に見えますが、ところがその当時、実は“暗黒時代”と呼べるほど、社内が大変な状態になっていたそうです。
そのことと、そこから会社を大きく変革したお話は、後編にしたいと思います。

後編へ続く

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)