2024年3月22日

“命”を懸けた活動をしている、NGO最強リーダーの覚悟と実践方法(前編)

“命”を懸けた活動をしている、NGO最強リーダーの覚悟と実践方法

~第139回(2024.1)全国経営者大会の感想①-1(前編)~

講演タイトル:
【特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン代表理事:大西 健丞氏
タイトル:《緊急報告》社会課題の解決に挑む! NGOの復興支援の実態 ―世界34の国と地域で支援活動を展開―】

◎はじめに

コロナ禍もようやく収束が見え出し、これから正常化した日常が戻ってくるかと思いきや、
正月には能登半島地震が起き甚大な被害が発生する一方で、
日経平均株価が異常と言えるほどの急激な上昇が起こっています。
他方で世界を見渡せば、ウクライナ戦争ではロシアの優勢が現実味を帯びてきていますし、
ガザ地区の紛争は泥沼化の一途をたどっています。
中国の政治経済の動向も、とても気になる状況に入っていると言っていいでしょう。
安定した世界を望むこと自体が現実世界と遊離してしまう、と言うことをあらためて実感する今日この頃です。
ビジネス現場の最前線に立たれている経営者の皆様には、
こうした予測がつかない変動した状況をどうとらえて、どう自社のビジネスを導いていくか、
日々格闘されていることと思います。

 

そんな中、今回「全国経営者大会」も、ようやく以前と同じ運営方法で実施できることになりました。

参加者の制限もありませんし、何より“懇親会”という経営者の皆様が直接お互い同士フランクに
交流を図れる場が開催できるようになったことは、とてもうれしく思います。
私にとっては多くの経営者の皆様から生でビジネスの現場状況をお聞きできる機会
であり、とても貴重な場になっています。

今回の懇親会でも、何人かの経営者の方とお話しできて、とても有意義なひとときとなりました。
実際このコロナ禍でも、M&Aなどを通して
確実に自社のビジネスを飛躍発展させている会社が何社もあることがわかりました。
まさにピンチをチャンスととらえて、社長が先頭に立たれて果敢に攻められている姿が目に浮かびます。
一方で、多くの社長が人材の確保と活用に大いなる悩みを抱えられていることも、よくわかりました。
このことも、まさにピンチがチャンスと思います。

私は約20年前に「社員に給与2倍払える会社が繁栄する!」と書き
(「ここまでやれ!儲けを生み出す営業部隊づくり」著書にて)、
「社長はこれから『業界で一番給与の高い会社を目指す!』と宣言すべき」と言いました。
かなり生意気なことを言ってしまったな、とは思いましたが、ようやくそうした時代に入ってきた、と思えます。
日本のビジネスがこの20年以上にわたって停滞した一番の原因は、
そうした高給を払えるための“人を活かす経営”を軽視したからではないか、と私には思えます。
是非、この文章を読まれている経営者の方々には、
あらためて社員皆が最大限活躍できるように導いてあげ、
会社を飛躍発展させていただくことを期待します。

と言うことで、「はじめ」の文章が少々長くなってしまいました。
これから、今春大会ご講演の感想に入りたいと思います。
はじめに挙げたいのは、NGOピースウィンズ・ジャパンの代表理事である、
大西健丞(けんすけ)氏のご講演です。とても強烈なインパクトをいただきました。

大西氏の印象

大西氏の第一印象は、とても落ち着いていて、何があっても動じない、まわりに安心感を与えるタイプ。
でも何かあった時には、俊敏に判断し迷いなく行動する方ではないかと思います。
その後いろいろお話をお伺いして、
日々命を賭けて人々の生死にかかわってきた方の覚悟の違い、「人間の器」の違いをあらためて実感しました。
そうした強い覚悟を持った器の大きい方から、今回のご講演を通して直接お話をお聞きできたことは、
それだけでも貴重な経験になりましたし、そのお話の重みもひしひしと感じています。
今でもこうやってご講演内容を振り返っていると、身震いさえ感じる次第です。

これまでの経緯として

お話の入りは次のようなものでした。
大学2年の時、新聞記者の父が倒れ、4年間脳死状態のまま亡くなった。
その途中は植物人間で、病院の重病棟に入ったので、家族が常に付き添った。
その中で、いろいろな重病者の方々を見て、「人は有限で死ぬのが当たり前!」とわかったことが、
この道に入るきっかけになった、とのことです。
それから20歳ぐらいで「人類最大の課題は何か?」と問うて、
「戦争を止めるか、戦争の惨禍を出来るだけ減らすこと」が答えと思って、
紛争解決の学問を追求するため、イギリスの大学へ留学。(父の生命保険金からだそうです)
この話だけでもビックリマークものですが、その後の話がとんでもない。
そこから28歳の時に、イランとイラクの紛争地帯の国境付近に一人で密入国。
そこでは、欧米のNGOの人達が活動していたものの、
当時のサダムフセイン政権に敵視され、時には殺されてしまう事も起こっていたそうです。
イギリスNGOの考え方として、オックスフォードの大学院では、
「私達は一番恵まれた立場にある。
だから私達には、そのリソースを社会に還元する使命がある」
と言われているそうです。
とっさに「そんな考え方が出来る人間が、今の日本人にどれだけいるのか?」と思えたのですが、
他者のことはともかく、あらためて己自身の社会的使命感との差と言うか、己の軽薄さに、ハッとさせられました。

その次に行ったのが、イラク内戦で、この時は一人で活動したとのこと。
銃を撃たれると、耳の近くでプシューと発射音があとから聞こえるそうです。
その一発目を避けられれば、どうにか身を隠せられる。やられるときはその音が聞こえないまま、終わり、とのこと。
また、ご自身が対人地雷を踏んでしまったこともあるそうです。
踏むとペコっとした感じで、その瞬間でわかる。
ただし、その0.5秒後に爆発して足が吹っ飛び、止血も難しいまま大半は命を落とすことになる。
自分の場合ほんとに運が良くて、信管が腐っていて助かった、とのことです。
こんな話を表情も変わらないままさらっと言われて、
聞いている私たちの恐怖心がますます煽られたよう感じました。
実はとてもお話の上手な方なんだと、振り返って思えた次第です。
(もちろん大きなNGO組織のトップですから、周りを巻き込む力は半端ないはずであり、
その説得力あるお話の仕方がすごいことは間違いないでしょう。
でも、そうした人こそ、政治家のように、自信みなぎって大声で訴えるとか、
気の利いたキャッチフレーズを連呼するのとは違い、
静かに一つ一つ自分の思いをこめてお話する、よう思えます。
このことも、振り返って、とても勉強になりました。)

こんな感じでご講演は始まりましたが、そんな紛争現場のお話から、次にとても大事なお話がありました。
大西氏がそうした紛争や大災害に携わってきて思うことは、
「(自分達だけ)単体で社会を変えるのは難しい。
(政府、行政、その他様々な人や組織・機関が緊密に)連携できる制度をつくる必要がある」
ということ。

過去イラクの難民キャンプ支援のための組織を作ったが、一年で倒産。
それで、外部に寄付を募ったことが今につながっているそうです。
日本の行政を通して組織づくりを行い、
ピースウィンズ・ジャパンというNGO組織を設立(1996年・・と言うことは、若干29歳の時です)。
但し、組織には現場がよくわかっているメンバーがいて、その人達が上手く動けるようにしていくことが大事とのこと。
現在働いているメンバーは契約社員も含め580名前後、62億円規模で運営するまでになっていますが、
この規模でも世界のNGO組織と比べると、まだまだ規模は小さいそうです。

ここからお話は、そのNGO組織の活動の事例になりますが、その内容は後編に譲りたいと思います。

後編へ続く

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)

講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)