24.経営者の勉強依存症がしくみを増やす |
経営のしくみは無くては困るが、多すぎても活用ができないことがある。
私は、経営のしくみは少なければ少ない程よいと主張している。
社員が自分の会社にどのようなしくみがあるのかが分からないということが多い。
その背景には、経営のブームがある。ふり返ってみれば、TQC、リエンジニアリング、
ISOと数え上げたら切りがない程の経営ブームがあった。
その一つ、ISOは一体何だったのかという言葉を最近よく聞く。導入間もない頃は、
書類に残すことが大切だという言葉が多かったのだが、最近では書類が多いだけで役に立っていない、
ISOを止めましたという言葉が聞かれる。
一度手をつけてしまったものは、組織に残ってしまう。
だから、ISOのしくみが全て無くなる訳ではなく、結局残ってしまうのである。
しくみはつくることよりも、修正・廃止の方が難しい。
流行の最先端の服を買うのはよいが、流行が過ぎてしまうと在庫として残るのに似ている。
中堅・中小企業では、このようなしくみを持ち込んでくるのは経営者である。
外部のセミナーなどで聞いて持ってくるのである。私は経営セミナー業界に長年に亘って携わってきたが、
実に経営者への動機づけの上手な業界であると思う。
それはビジネスであるから当然のことではないかと思う。
経営者がセミナーから帰ってきて、相談を受けることがある。
それは、セミナーで新しい経営のやり方を勉強してきたので、実施したいというものが多い。
「当社には合わない」と話すのだが、結局は実施してしまうことが多い。
この時、経営者には物事の本質を見る目がなくてはと思うのである。
経営者に比べて、社員の方が見る目が正しいと思うことがある。
それは、新しいしくみを導入して活用するのは自分達であるから、
本当に役に立つかどうかを真剣に考えるからである。
ただ集団規範が正常に働いていない組織では、経営者が外で見てきたものをただ受け入れるだけ
という従順な受け入れ役となってしまうことがある。
経営者の持っていなければならないものに、直観力がある。経営者の直観とは、
考え抜いた直感でなければならない。この直観とは、幾つかの切り口を準備しておき、
そこから考えてみるというものであり、思いつきであってはならない。経営者が直観で物事を決めると、
全ての責任は経営者の責任となる。
そこで、「セミナーでこう言っていた」、「本にこう書いてあった」ということにより、
責任を免れるからである。
セミナーや本は、一つの切り口であり、それそのものをそのまま実施するということはあり得ないのである。
[前回へ][次回へ]
平松 陽一へのお問合せはこちら