今の時代の“本質”を照らす、アサヒビール、マーケッター社長の奮闘記!
~第138回(2023.7)全国経営者大会の感想②-1~
講演タイトル:
【アサヒビール 代表取締役社長 松山 一雄氏
タイトル:《顧客創造》お客様を中心とした経営 -世界で一番魅力的でワクワクするビール会社を目指して- 】
◎はじめに
松山社長は、ビール業界の経験ゼロで5年前にアサヒビールに入社したそうです。
以前の経歴との共通点は、すべてモノづくりの会社であること。
鹿島建設㈱からスタートして、株式会社サトー、P&Gジャパン、そしてサトーホールディング㈱社長を経て、
アサヒビールのマーケティング兼セールス統括本部長兼専務取締役として入社。
そして2023年3月に代表取締役社長になられたとのこと。
マーケッターでありながら、組織全体を統括する社長になられる方というのは、
目先の売上や行動ではなく、組織全体さらには世の中全体を俯瞰して捉えて、
大局的な視点でビジネスのかじ取りが出来る、とても優秀な方が多いよう思います。
実際、この大会で以前講演していただいた、
例えばネスレ元社長の高岡浩三氏や新日本プロレス元社長のハロルド・ジョージ・メイ氏も、
まさに時代の本質を射抜く鋭い感性と共に論理性が高く、
その上そうした広い視野を持たれた方で、ご講演内容にとても啓発されたことを思い出します。
今回の松山社長のご講演も、とても啓発され共感する部分も多かったので、
私のメモを基に、その内容を勝手な感想を加えてお話したいと思います。
◎経営とマーティングの統合
松山社長は、アサヒビールに入社することになって、まずはビール業界全体の課題を次のように考えたそうです。
<ビール業界の課題として>
①日本のビールはおいしいが、どれも似ている
②人口減少なのに、数量競争を続けている
③イノベーションが無く、退屈な業界(のように見られている)
④その結果、ビール業界は右肩下がり
これって、ビール業界だけでなく、日本のほとんどの業界にあてはまる、
日本のビジネス業界全体の課題と、私には思えます。
同質化競争、値引き価格競争、チャレンジの回避、イノベーションの欠如、
結果としての停滞衰退化の継続(加速化?)・・ビジネスだけでなく、閉塞した日本社会全体の課題と言っていいでしょう。
ではこの難題(課題)をどうやって打破していくのか?
そのヒントが松山社長のお話にあったよう思います。
まず会社のあり方、目指す姿をキャッチフレーズで表現することからはじめた、とのこと。
「お客様にとって、世界で一番ワクワクするビール会社」
「うまいビールがあって、いい人生を作る会社」
そして、このキャッチフレーズをはっきり打ち出すために、
ビールを飲む場面を想定し、挑戦しワクワクして飲んでもらえるようなCMを作成して、大々的に流した、とのことです。
それは、お客様に向かってと言うこともあったが、
社員のみんなに向けて、と言う意味も大きかった、とおっしゃっていました。
私は、このお話を聞いたとたんに小躍りしてしまいました。
「私の思っている事、そのまま言ってくれている!」
なにより「世界で一番」と言うフレーズがいい。もう日本だけを対象にしたビジネスなんてアウト。
どんな会社も、まず“世界”を大前提にしてビジネスを考える発想が求められている、と思います。
アサヒビールは、まさに世界に進出して、世界で勝つことを目指していますよね。
(実は、現在私も自分の独自ビジネス理論を“日本発世界初唯一”と言うサブタイトルで、
ユーチューブで発信する準備を進めているのですが、将来的には全世界に向けて発信したいと思っています。
周囲の人達には、半分冗談として笑われていますが・・)
それに、「ワクワクする」と言う表現もいいですね。
やっぱり、なにより「明るく元気」が大事でしょう。
(参照:関西経営管理協会様ホームページ コラム欄 VUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)時代の社長の大戦略① ―よくよく考えて・・“何より明るく元気!” 2023.2.17付)
それから「・・いい人生をつくる」と言う表現も、「そうそう、それだ!」と思いました。
と言うのも、これからの時代、自社の商品サービスを単にその場の喜びや効果として提供するのでは、
お客様や社会から価値を受け止めてもらえない。
そうではなく、その商品サービスが、いかにお客様の「人生の幸せ」につながっているか。
さらには「社会の幸せ」につながっているか、を表現することが、とても大事になっている。
そこまで行ってこそ、はじめて価値を認めてもらえるし、
お客様から支持され、“推し”てもらえる時代になっていると言うことです。
(このことは、最近よく目にする「パーパス経営」・・「社会的存在意義を中心に据えた経営」とも関係しますが、
その話は別途に今後お話したいと思います。)
松山社長は、そのことを十分実感されてこのキーワードを作られ、
ご自身として熱き思いをもって訴えられたのだと思います。
なにより、自社ビジネスの目的、あるべき姿をしっかり示し、
社員やお客様、周囲の人や企業に「元気とやる気」を与えること。
このことが、今の日本のビジネスと言うか、社会全体に必要になっているよう思います。
今の日本に元気が無いのは、多くの会社、多くの人達に、
そうした生きる目的、あるべき姿が見えなくなっていることが原因ではないか。
だからこそ、そうした目的、あるべき姿を鮮明に掲げられる会社こそが、
これから飛躍していける、ということでしょう。
こうしたキーワードを掲げることは決して難しい事ではありませんが、
トップ経営者ご自身が、そのキーワードに熱き思いを込めて、
社内外の人達にいかに本気で語っていくか、そのことが何より大事と思います。
ということで、・・
ここまでで、私は十分価値ある講演だったのですが、
その後のお話も、大変勉強になる内容でした。
そのお話は、後編にしたいと思います。
後編へ続く
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)