“子供達の絵”で会社を飛躍発展させている、社長のお話
~今夏(2024.7)大会講演への感想として①-2(後編)~
(前編はこちら)
講演タイトル:やさしい気持ちがみらいをつくる!~今どきなぜ「宮田運輸」には人が集まるのか?~
宮田博文氏 ㈱宮田(HD) 代表取締役社長
―「子供たちの絵」の、素晴らしい効果―
そして試しに何台か実際にラッピングしてみたら、
子供の書いた絵が、どれほど人の心を打つか、実感したそうです。
それまでは、会社側から、安全運転や洗車・清掃など、口酸っぱく言い続け、
ドライブレコーダーを付けて運転状況をチェックしたり、管理をいろいろやっても、
それでもなかなか守ってもらえなかったのが・・自分達で自ら積極的にやりだす。
たった一枚の絵で、ドライバーの意識、行動が全く変わる、ということが分かった。
それで全車的に導入を図ることにした、とのことです。
子供がいないドライバーには、他のドライバーの子供に書いてもらったり・・。
それはそれで、とてもうれしいから、大きく変わる。
また、トラックを見た周りの人達も大きく変わる。運転しているトラックに、外から
家族連れの人が手を振ってくれる。子供達が楽しそうに見てくれ、おばあちゃんが、頭を下げてくれる。
さらには、「心穏やかになりました」と言った手紙さえもらえる。(その手紙をみんなに伝える・・)
だから、走っているだけで幸せを感じられるようになる。
「子供を乗せているような感覚で運転している」
「万一事故を起こしたら、その背後に家族子供たちがいることを自然に意識してしまう」
自分だけでなく、まわりの人達も一緒にいて、一緒に見てもらっている、
と言うことが、どれほどモチベーションを上げるか。ほんとに大きく違うことが分かった。
また、ドライバーだけでなく、会社の中の雰囲気も全く変わって、温かいものになったし、
取引先も、当社に対してより温かい思いを持ってもらえるようになった。
それが取引にも大いに良い影響を与えている。例えば学校給食の配送を一手引き受け等々。
―この幸せの仕掛けを、外にも広げていく運動を開始―
この幸せを生む仕掛けを一社だけでやっていても限度がある。
4人で選任して、全国の幼稚園や小学校を回って、子供たちに絵をかいてもらって、
多くのトラックにラッピングしてもらう取り組みをはじめることにした。
(「ミュージアムプロジェクト」の立ち上げ)
「優しい気持ちが、未来を創る」を旗印に、運送トラックだけでなく、バスやデイサービスの車、
工事現場のフェンスなどにも、子供の絵をラッピング。
その活動を海外にも広げて、中国やラオスでもおこなっており、海外から当社に視察にくることも・・。
―社内の環境をより温かいものにする、その他施策としてー
こうしたことが理念のビジュアル化につながり、会社の活性化に
大いにつながっていることが分かったので、さまざまな対策をあわせて進めることにした。
例えば、簡単な例としては
①ドライバーの休憩所に、子供たちの絵を貼って、ギャラリー化。
(会社の中も家族と一緒、と言う雰囲気をつくる)
②各人のコーヒータンブラーに家族の絵をプリントして、プレゼント。
(毎日の点呼も、家族から安全に帰ってきて、と言われているような気持ちになって、受け止めてもらえるようにする。)
また、そのほかの施策として・・
③子供たちが歌う子ども社歌を作り、社内に放送。
④各人の人間力を高めるため、雑誌「到知」の感想文を毎月提出することを義務付け。
・はじめは、反発して3人が退職したが、それでも続けた。続けていることで、そのことの意味
がみんなに伝わってきている。(二人は戻ってきて、今では十分納得しているようである。)
⑤フィロソフィー委員会を設置
・「美点重視」「フィロソフィーは現場にある」が主旨。
・現場の何気ない良いことを見つけてYouTube動画を作成。一か月一本アップ。
・例えば、配送先の現場で他社の人が困っていた際、他の人達が見て見ぬふりで誰も手伝わない中、
当社の社員が手伝った。後からその会社の社長よりお礼の手紙が来た。
手伝った社員曰く「困っている人がいたら、助けるのが当然でしょう!」とのこと。
(社長として)その言葉がとてもうれしかった。
⑥未来会議の開催
・部門別の業績会議ながら、業績の確認ではなく、経営をみんなでシェアする場であり、
社員への感謝と承認の場としている。
・日曜日朝から、午後3時まで。幹部だけでなく、社内外にオープンにして、誰でも参加OK。
社員の家族も参加。
・自分のやっていることが、今の経営にどうつながっているか。
「未来に希望をもって、社会を良くしよう」と言う会社の理念を、
会議を通してみんなに実感してもらうことが何よりの狙い。
◎経営理念として:
「全従業員と幸せを分かち合い」
「社会に『夢』『感動』『喜び』を提供し・・」
「未来の進歩・発展に貢献する」
◎ここで強調したいことは・・
⇒「会社のことを社内だけで考える時代は終わり!」
・親子で働ける環境を作る。
子供の時から、会社に触れ合えるようにする(自分がそうであったように・・)
これらの施策をお聞きすると、宮田社長の熱き想い、半端ないこだわりとその実行力が伝わってきます。
ここまで徹底するからこそ、実際に社員さんにその想いが伝わりますし、
社員以外の家族や外部の人達にも確実に伝わっていくことと思います。
さらには、会社の個性として際立つことで、人材採用や取引先との関係親密化などなど、
様々なビジネス効果を生むことにつながっていることは、容易に想像できるでしょう。
ちなみに、「NHKおはよう日本」等多数のメディアで取り上げられていますし、
2023年3月には「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞受賞をされています。
―自社のビジネスの発展として・・福島除染地域への新たな展開―
一方、ビジネス活動としては、「社会へのお役立ち」という考え方を重視。
そこで、声かけられて福島県富岡町の原発汚染地域に運送拠点(倉庫兼トラックの配備)を開設することに。
除染地域として、マーケットが全くなくなってしまったため、物流もなくなって工場も進出出来ない。
そこで、先に物流機能を誘致した上、それから工場の進出を後押しするという話。
収益の見込みが立たない中、社会的なお役立ちと思って、当社で取り組むことにした。
900坪の敷地に倉庫を建設。町の協力を受けてスタートしたが、途中で満床になり、
今はもう一つ物流倉庫を作ることになっている。ビジネスとしても採算がとれるようになってきた、
(自社の今後の発展の一つのきっかけになりつつある)とのことです。
お金ではなく、志が大事。それも「社会貢献」の志。それが結果としてビジネスとしても、
大いなる飛躍発展につながっていく、と言うことだと思います。
―ご講演のあとの質問として・・―
そこで、ご講演の最後に、私は次のようなご質問をさせていただきました。
「宮田運輸のビジネスとしての強みは何か?運送業の今後のあるべき姿は?」
宮田社長の発想力とその実行力の素晴らしさは、「子供達の絵」だけでなく、
きっとその他のビジネス戦略にも発揮されているはずと思いましたのでお聞きしたわけですが、
その答えとして、次のようなお話をいただきました。
「現在運送業者が6万2千社あるが、今までのようにばらばらに活動するのではなく、
人の活用も含めて、それぞれお互い協力し合っていくことで、効率性を上げていく。
それも運送だけでなく、お客様も巻き込んだ共同体としての活動にまでしていく、ことが必要と思う。
当社の場合、取引先25社をまとめ共同配送を実現しているが、それは(より利益を上げることのできる)
強みになっている。但し、それまでの条件では、運転手が前日夜中作業になってしまうため、
取引先にお願いして、前々日受注締に変えていただいた。
『未来の社会が、どうあるべきか』と言う視点でビジネスを考えることが何より大事で、
それがそのまま経営改善につながる。当社もそうした視点での改革によって、
経常利益が3.4%から、7%に改善することが出来ている。」
宮田社長の発想力や実行力の源が強固な「志」にあり、社員のマインドアップや風土改革だけでなく、
ビジネスのあり方へ向けた戦略的な施策にも一気通貫につながっていることがよくわかりました。
だからこそ、宮田社長が取引先や関係先も含めて社内 外のみんなを巻き込んで、
より大きな成果を上げられているのだと思えましたし、そのたぐいまれな巻き込み力の源が
どこにあるのか、あらためて実感させていただいた次第です。
―蛇足として・・宮田社長の印象について―
宮田社長とはご講演後、名刺交換させていただいたのですが、お顔を間近で拝見して、ビックリ。
と言うのは、私が経営コンサルタントとして独立前後12年お手伝いした
大阪の某社の社長さんのお顔とそっくりだったからです。
その社長さんは、いつもにこにこしておられて、社員を乗せるのがとても上手で、
私にも「会社が成長出来ているのは、山川先生のおかげだ!」なんてみんなの前で(笑いながら・・)
言っていただいたこともありました。但しそれは私だけでなく、その時々で
「今回は、○○君のおかげで、これだけの成果が出た!ありがとう」と言った言い方で、
いろいろな社員さんへの感謝を示し、やる気を引き出していました。
カリスマ的でありながら決して偉ぶることは無く、人の話を聞くのも上手。
茶目っ気があって、社員の皆さんから慕われていました。
一方だからこそ、強いリーダーシップをもって、新しいことにチャレンジする時には
不退転の姿勢でもって、みんなを巻き込み、その時々に発生する壁を乗り越えて
会社の成長を実現させていきました。ちなみに、その社長さんはだいぶ前に引退されましたが、
その後引きついだ義理の息子さんが社長となられて、その後もしっかり年々成長を実現しており、
(私がお手伝いに入った年は、年商42億円だったのが・・)今では1000億企業近くにまでなっています。
宮田社長は、そんな社長さんにとてもよく似ていて、にこにこして茶目っ気があって、
でもやんちゃで、一度自分が決めたことは徹底してやらないと気が済まない、
そんなとても人間味あふれる方のようにお見受けしました。
私が、お顔がよく似ている社長さんの会社が1000億近くになっていることをお伝えしたら、
「じゃあ、うちの会社も1000億になるかな」なんてにこにこ笑いながらおっしゃっていましたが、
私はほんとに1000億の会社を目指していただけたらと思います。
物流業界も、日本の多くの業界と同様、大変な局面に直面しているわけで、
ピンチがチャンスととらえるなら、「社会貢献」を本気で考え、ビジネスの志として
実行されている宮田社長の宮田運輸が、1000億の会社になられることは、
オーバーと言うより、むしろ必然性を感じてしまうところです。
と言うことで、宮田社長のこれからのますますのご活躍をご期待させていただきます。
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)