2024年10月15日

藤沢 久美氏のご講演―経営者の言葉、決断の大事さ…あらためて深く納得!(全国経営者大会にて)【後編】

経営者の言葉、決断の大事さ…あらためて深く納得! 藤沢久美氏のご講演内容について

~今夏(2024.7)大会講演への感想として②―2(後篇)~

 

(前編はこちら

 

講演タイトル:《総括》不確実な時代に求められる経営者のリーダーシップ 今どきの若い社員は何に飢えているのか?
藤沢久美氏 (国際社会経済研究所 理事長)

 

第140回記念 全国経営者大会の講師 藤沢久美氏の講演を聴いての感想を前編と後編に分けて掲載しております。前編の続きです。

 

―経営者に求められる7つの能力―

次に、そうしたリーダーシップを発揮するために、経営者にどんな能力が求められるのか?
以下のようなお話がありました。

 

<1:視野拡張力>

決める力があり、決めるポジションにある人は、視野を広げることがとても重要。
世界的なトップリーダーの視野は、立体的に大きく、時間・空間軸がとてつもなく長い。宇宙、生物、人類…。
1000年先、2000年先まで考え、人類をどう将来へ向けてつなげていけばいいのか。
その上で、これからの人類のために自分は何をなすべきか…。と言う発想をとる。
一方で、水面下も深い。人間の持っている妬み、恨み、悪意…。人間の抱える悪の部分も十分わかっていて、
(自分も悪を持っているし、その悪の出来ることを自覚するからこそ)それをしない。
現場の気持ちもよくわかっていて…。そしてリスクがはっきり見えるから、決断する。
(それが、世界のトップリーダー…。)
そうした視野拡張力を持つためには、まずは自分の時間を持つこと。

それから、…なにより二元対立で判断してはいけない。複眼的に世界を見る。
例えば、コロナ禍を経て、世界は大きく変わっている。(日本は一見変わっていないよう見えるが…)
日本は不況で社会も劣化していると(自分達では)思っているが、先日ドイツから来た知人は、
「日本は食事がおいしく街がきれいでゴミも少ない。電車は時間通りだし、犯罪も少ないし、
人々が嘘をつかない。それに比べてドイツは…」と言っていた。
実際、世界中で社会の混乱がより進んでいる(よう思える)。

また、世界中の先進国で保守派が進んでいるよう見える。
それは多くの人々が今、不安を抱え「昔(の良かった時代)に戻りたい」と言う気持ちがあるからではないか。
一方、グローバルサウルス等の新興国の場合、全く対照的な状況になっている。今まで良い時代がなかった。
それが、デジタルサービスが普及することでようやく良い時代が到来するという希望が生まれている。
彼らは不幸な過去に憧れることは無く、未来(の希望)だけを見ている。
例えばナイジェリアの大統領は毎朝ネットに姿を現して、国民に希望を伝えることをやっている。
若者が元気で、デジタルを活用して新しいことにチャレンジすることがどんどん起こってきている。
残念ながら、日本は前者の先進国に入るのだろう。

先日若い人から「いい加減『日本は課題先進国で、その課題を解決しよう』なんて言い方は、やめてくれませんか!」
と言われてしまった。その理由を尋ねると「それって、昔に戻りたいと言いたいんでしょう。
僕らにとっては今が事実なんです。だからその事実を前提に、自分たちの世界を新たに作っていきたいんです。」
とのこと。彼の話を聞いて、新興国の若者と似ているな、と思った。いつでも若者は自分たちの
目指す未来を作っていきたいはず。「最近の若者は…」と言う言葉は、5000年前の
古代エジプト時代でも出てくるそうである。いつの時代も、大人の人達は若者を批判的に見てしまいがちだが、
若者は精神が敏感で、その時の社会に足りないことに敏感に反応している、と捉えるべきだろう。
(そう考えてみて…)今の日本に足りないものは何か?人を思いやる気持ち。
そして人と人との“ぬくもりある”つながり…。それを今の若者は求めているよう思える。
(時代の空気は…)振り子のように上がったり下がったり揺れていて、
経済が足りない時代は経済を求めたが、それが行き過ぎて、今度は心の豊かさ、
を求めるようになっている。だから今あらためて、若者と協同して新しい時代を作っていく、
と言う発想が大事になっていると思える。

この「視野拡張力」のお話は、まさに時間空間的な広がりのある内容で、
藤沢氏の世界観に自然に引き込まれてしまいました。私も“今何が一番大事で、何をなすべきか”
の確信を得るためには、歴史や全世界と言った時間空間的な広がりをもって考え抜くことが重要
とは思っていましたが、今回その大きなスケールのお話にウ~ンとうなってしまいました。
同時に、なにやら熱き思いも湧いてきました。宇宙、生物、人類、1000年2000年先…究極的にそこまで考え、
なおかつ“人類のため”まで考えること…。それだけ圧倒的な大きなスケールで考えることが、
今まさに日本のリーダーシップを持つ人達に求められている。そう藤沢様に叱咤激励されたと思える次第です。
また、その後の海外の先進国と新興国の違いや若者の話もとても新鮮で、
今まで気づかなかった捉え方を教えていただいたよう思います。
※ちなみに、日本とフランスの犯罪件数を比較した文章をたまたま見つけましたので、
この文章の最後に、参考として載せました。

 

それから経営者に求められる能力として、続けて挙げていただいたのが
<2:未来を想像する力><3:らせん階段の発想法><4:原点に戻る>
<5:資金調達力><6:他を頼る><7:信じる力>でした。

 

<2:未来を想像する力>

そのため、経営者には未来を想像することが必要になるが、どうすればいいか。
取引先の変化のその先を見る。
例えば、静岡の鍛冶木工の会社。はじめは鏡台を作っていたが仕事がなくなり、
それで(今後増えると予測して)車のバックミラーづくりに取り組んだ。
バックミラーと言う面積の狭い部品で収益性も高くないので、大手他社が参入してこなかったこともあり、
事業の転身に大成功。トヨタと取引出来るまでになった。しかし、そこまではうまくいったが…
今後は自動運転が主流になって車にバックミラーがいらなくなっていく、と考えられる。
さて、これからどうするか。そこで今は鏡の反射の技術を応用したフロントガラス向け新製品への取り組みを進めている。
このように取引先の動向を先回りして考え、先手で動くことが必要になっている。
また、ベンチャー企業の動向を見ることも有効。実は静岡県では(私も関わっているが)、
全国のスタートアップを集めた展示会を開催し、そこに地元企業もブースを出して、
お互いがタイアップ出来る取り組みをしている。皆さんも、自分たちの業界に近いところで
どんなベンチャー企業が出てきてどんな動きをしているか、注視してほしい。
大企業では5年6年かかることに、ベンチャー企業が先行して動いていることも多い。

 

<3:らせん階段の発想法>

らせん階段を上から見るなら、ぐるぐる回って元に戻っているように見えるはず。
同様に、(社会現象やビジネスにおいて)昔あったことが復活して回帰しているように見えることがよくおこる。
例えば、スーパーマーケットが郊外に出来て、街中に『よろず屋』がなくなってしまったが、
その後、「コンビニ」が広がっていくことになった。今 自社の事業がどの位置にあるのか、
以前のビジネスが復活するとしたら自社も取引先も、どうなるか、と発想してみる。
昔の商品サービスにも、それなりに価値があったはず。それがコスト的に採算が合わないとか、
環境が変わって求めることが変わってきた、言ったことで廃れてしまったと考えられる。
ところが、あらためて採算が合うやり方ができるようになった、等と言うことも起こってくる。
例えば楽天市場では、ネットを介することで、従来のやり方では難しくなってしまったビジネスが復活している例が
意外と多い。そうした「らせん階段」の発想も必要になっている。

 

<4:原点に戻る>

一方、らせん階段を下りて、過去に戻って、これまで大事にしてきたものは何か?に立ちもどることも大事。
例えば、創業社長がずっと言っていたことを思い出し、そこからあらためて自社の事業を考え直してみる、
と言ったこともあるだろう。静岡銀行の場合、「これからの銀行はどうあるべきか?」を考えるのに、
銀行の歴史を振り返った。そこで「人々のお金を活かす」ことで「産業を創る」という原点を見出し、
従来の銀行業の枠を超えた、不動産業や人材派遣業と言った新たな分野にも事業を広げていくことになった。
どういう理由で自社が生まれたのか、原点に戻ってみる、ということだ。

若い人は、「なんのために働いているのか」をとても気にしているし関心がある。
それを言ってあげれば、心に火がともる。今の若い人は(成長が前提の)良い時代を全く経験しておらず、
常に不安を抱えている。その不安だけをモチベーションにして勉強している人もいる。でもだからこそ若い人は
「こんな社会にしたい、(だから)こんな会社であってほしい」と思い、「自分の目標と会社の目標を一致させたい」
と思っている。故に「これだけの数字をあげてこい!」とだけ言われることを嫌う。
「会社はこういうことを目指している。だからこういうことをあなたに求めている」
と若い人達にはっきり目的を言ってあげることが大事。目的目標が定まれば、今の若い人は頑張れる。

それから、「デジタル教育」は確かに必要だが、(原点に戻って)
“人にしかできない仕事”がより重要になっている。職人さんの今までやっていたことをデジタル化するなら、
(新人が)その仕事を学び身に着けることがより容易になる。そこで今までの職人さんには、
新しいことにチャレンジしてもらう。そういうことが、デジタル時代だからこそ出来るし求められている。

 

<5:資金調達力>

ビジネスには「資金」が必須。でも、これまでのように銀行に頼るだけでなく、
いろんな調達の仕方が出来るようになってきた。例えば、クラウドファンディングも考えられるし、
自治体等行政に逆提案して、補助金を出してもらえるようにする‥等々。魅力ある未来を提示し、
その未来を自分たちが実現できることを示せれば、いろんな資金調達のやり方が考えられるだろう。

 

<6:他を頼る>

自分や自社だけでは限界がある。他に頼ることもっと考えていいし、
実際より容易に出来るようになってきている。例えば、今オンラインで副業がひろがっていて、
そうした副業をしている人を活用することも十分考えられるだろう。
(人材に限りある)地方も、東京にいる人を活用することが可能だし、どんどん進めていい。

 

<7:信じる力>

最後に「信じる力」を挙げたい。
北海道のお菓子メーカー、六花亭の社長さんのお話。毎月社長表彰を行っている。
でもその社員の活動対象は社内だけではない。新人の中根さん(仮称?)が、リーダーシップ大賞になった。
それは、町内の盆踊り大会で中根さんがリーダーをしっかり務めたから。実は中根さんは新人ということもあり、
それまで社内ではおとなしく目立たなかったそうである。でも、この子にはいいところがあると社長は思っていて、
社外での中根さんの活躍を社長がよく見て、評価したという。それ以降中根さんは
社内でも見違えるほどの活躍をしてくれている、とのこと。(その活躍する姿が容易に目に浮かぶ…)

(その社長にお会いしてお話しすると…)社長には、信じる力があるから、言葉に力がある。
社員一人一人を信じている(ことが伝わってくる。)
(数年前)コロナ禍で売り上げが大幅に落ち、工場を週二日止めた時、
社員から「通販をやりましょう。こんな時だからこそ、(当社のおいしいお菓子を食べてもらって、みなさんに)
幸せな時間を届けましょう」との提案を受けた。そこでその提案した社員に任せたところ、
今では会社は次の大きな成長軌道を歩むことが出来るようになっている、そうである。
社長は「社員みんなが会社のことを思ってくれている。(社長は)社員を信じて、
社員を頼ることが大事と(ようやく)わかった」とおっしゃっており、
その表情は(以前の、“ぐいぐい引っ張っていく力強い経営者”と言う印象とは大きく変わり…)
とても穏やかで、高い人格まで自然に感じられるほどである。

最後に…物事を進めていくには、何より時間がかかる。
その時間に耐えて進めていくには、「(人を)信じる力」が何より大事、といいたい。

 

と言うことで、振り返ると、藤沢様には広く興味深いお話を本当に目いっぱいしていただいたことがわかります。
この感想文は、もう少し簡潔にしたかったのですが、一つ一つのお話が奥深く、
かつ経営者の皆さんにはとても有益と思えましたので、少々長くなってしまいましたが、
そのまま載せることにしました。(また、お話の要約が私流の男言葉になってしまいました。
ご講演の際の、藤沢様のお話の雰囲気をお伝え出来ておらず申し訳ありません。)
実際わかりやすく平易でありながらとても納得できる事例や挿話が、お話の一つ一つに挙げられていました。
そのように納得性が高いのは、まさに藤沢様ご自身が、そのお話していることに、
自分事としての強い実感を伴った共感を持たれているから、と思います。
そうした共感を基にしたお話だからこそ、聴講している私たちにも、単に理性的な理解というより、
胸の内に熱い思いを持った、共感を伴った納得を与えてくれたよう思います。
本当にありがとうございました。

 

※参考:実際、最近読んだネット記事から…
「(日本の)警察庁によれば、犯罪件数は2002年をピークに4分の1に減少した。
…たとえば、警察庁の最新の集計(24年?)では、国内の殺人発生率はフランスの4分の1。
人口10万人当たりの強盗の発生件数はフランスの44.3に対して日本は1.2。窃盗は、フランスが457.6、
日本は35.2である。(「クーリエ・ジャパンから」)」
・ドイツではなく、フランスとの比較ですが、日本と比べての諸外国の犯罪率のあまりの高さに驚きました。
これからの世界がどうなるのか、ますます心配になります。
一方日本企業としては、むしろそこに大きなビジネスチャンスがある!とも言えるでしょう。
「製品サービスの信頼性、安心安全性…」はもちろんですが、あらためて藤沢様のおっしゃるように
(社長の)「信じる心」(から生まれる社員仲間同士の“熱き思い”や“革新”的な取り組み)
がなにより大事なってくるよう思えます。

 

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)

講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)