『付加価値生産性』重視に大転換! 冨山 和彦氏のご講演よりー
~今春(2026.1)大会講演への感想として~
はじめに
今回の全国経営者大会の直後に衆議院選挙が行われ、
高市自民党が歴史的とも言える大勝利を収める一方、中道勢力が大敗。
この結果によって日本が再び繁栄していくための第一歩となるのか、はたまた更なる混迷のはじまりか。
何れにしても、従来の延長線ではない第一歩が始まったことは間違いないでしょう。
そんな中3月に入って、イスラエルとアメリカがイランを電撃攻撃して最高指導者を殺害し、
そのまま戦争状態に突入してしまいました。戦争状態は今でも続いており、世界中の経済が混乱して、
株価も大きな変動に見舞われています。特に日本の場合、石油関連資材の供給不安によって、
株価の大幅な下落変動とともに、実際の経済活動に大きな支障が起こりつつあります。
こうした今だからこそ、経営者は緊急事態にあたふたすることなく、
5年先10年先、さらにはその先の将来を見据え、自社の理念と将来ビジョンをあらためて鮮明に打ち出すこと。
そして、今何をなすべきか。「絶対プラス発想」の精神をもって、皆に勇気と元気を与え、一緒に前に進んで行く。
そんな経営者の覚悟が求められているよう思えます。
振り返って今大会で最も印象に残ったのが、最初の基調講演であるDeNA会長、
南場智子氏のお話と最後の総括講演の㈱日本共創プラットフォーム代表取締役会長の冨山和彦氏のお話でした。
お二人ともどちらかと言うと平常心を保った静かなお話しぶりでしたが、
それだけに講演内容が深く心に残ったよう思います。
ビジネスのあり方自体が大きく変わる時代に入った。そんな感想を持ちました。
そこで今大会の感想として、はじめに冨山氏の講演内容をご紹介したいと思います。
※ちなみに、講演内容は私のメモを基に書いていますので、言葉や内容等に一部勘違いがあるかもしれません。その点はご容赦下さい。
講演タイトル:
2026年日本敬愛姿勢戦略と経営者の役割
破壊的イノベーションで革命を起こせ!
講師:冨山 和彦氏
㈱日本共創プラットフォーム 代表取締役会長
冨山氏は、経営コンサルタントから、産業再生機構の設立に関わり、その経営トップを経験されたのち、
実際の地方企業の再生に経営者として関わっているという、誠に稀有な経験をされている方です。
それだけに、その発言は、大局的論理的なだけでなく、
現実の経営現場の実態を捉えた、実体的な正鵠を得た内容といつも感じています。
今回の講演も、まさにそうした内容でした。
「やっぱり、そうだよな」と思えることが多く、あらためて今大会の≪総括≫にふさわしい内容だったと思います。
◎現在の時代状況について
今月の解散総選挙の結果は、一言で言えば伝統的な政治の枠組みの崩壊だろう。
新しいテクノロジーが劇的に進化する時は、いろいろなことが同時に起こってくる。大衆間の格差も広がる。
過去を見るならラジオ・テレビの台頭が、ナチスの台頭を促した。産業革命の時格差が広がり、社会主義運動が勃興することになった。
AIもある種の革命であり、そのままでは格差が広がり、大きな混乱に結びつく可能性もある。
でも、だからこそ『いかに物事をポジティブにとらえて、物事を進めていくか』が大事になっている。
はじめにさらっとお話ししていましたが、まさに大事な現状認識と思いました。
私は、「起業・新規事業の進め方」を解説しているユーチューブ動画で「『絶対プラス発想』の心掛けが大事!」と言っています。
振返ってみて、何が起こるかわからない、大混乱さえ予測される今の状況だからこそ、
起業・新規事業の時だけでなく、どんな場面においても「絶対プラス発想」が大事な心掛けとあらためて思えました。
◎デジタル化と日本の人口減少社会について
デジタルイノベーションが進めば進むほど、格差は広がっていく。そこに潤沢な雇用は生まない。
たとえば、アップルは米国での雇用を数万人削減している。
一方、日本はデジタルの負け組なので、極端な格差はそこまでになっておらず、社会は比較的安定している。
アメリカ、サンフランシスコではポルシェをいっぱい見るが、女性が夜一人で歩けない。
日本においては、10年前から人手不足になることを言っていたが、いよいよ実際にそうなってきた。
地方では、高齢者が増えてバス需要はむしろ増えているものの、バス運転手が不足してきている。
人口構成からお客様も減るが、働く人がもっと減っていくことは確実。人類史上初めてのことが起こっている。
日本人の住まい方を考えないといけない。地方は、ナショナルミニマムのサービスを考えざるを得ない。
道路陥没の危険が何千か所もあっても、やる人がいないので、直せない。建設コストが5倍になって来ている。
インフレはこれからも続く。一方で働く人がどんどん減っていく。だから賃上げしないとビジネスが成り立たなくなっている。
このことは間違いない。付加価値を上げないと、ビジネスが成り立たないが、未だ30年の刷り込みから抜け切れていない。
◎故に、これからの経営にとって、大事なこと
「付加価値生産性」が何より大事!
粗利益額を総労働時間で割った数字を上げていく。
そのため粗利率を上げる。(個数を上げるのは難しい)
それは、ある意味正常な考え方。
そのため、商圏内で一番価値の高いものを提供していく。
そのために雇用の質を高めていくこと。
ところが、今日本の付加価値生産性が低くなっている。(世界30位)
トップのアイルランドは、日本の三倍。日本の中等教育は世界一。教育水準は高い。
その上勤勉でチームワーク精神も高い。なのに、この状態?
それは、長年デフレで、生産性を抑えて、低賃金のワークシェアリングになっていたから。
このことがこれから大きく変わっていくことになる。
頭を切り替えること!
日本の国内70%はローカル企業で成り立っている。そして、中小企業従業員の比率は上がってきている。
(実はアメリカも貿易依存は10%で、残りは国内中心。)
更には、これまでの(大企業)ホワイトカラーの仕事の大半が、情報の伝達処理だったが、
その部分の大半がAIに代替されていくことになる。そうなると、問うべきことが出てくる。
「(AIではなく)人間がやってくれるほうにお金を払うとしたら、それは何か?」
◎これから価値ある人(仕事)とは?
①ボスの仕事
・AIをボスとして使いこなす人。問題を設定し、意思決定する。そしてその責任を持つ。
(未来には、不確実性が残っている。その責任は人間だけしか負えない。)
・AIが自然言語になって、誰でも使えることになっている。
そうなると、IT人材はいらない。ボスだけで、使えることになる。
(※山川補足:実際、従来では数十人は必要とされる事業を、生成AIを使って数人で運営している企業があるそうです。)
②現場のエクスパート・・身体と心が勝負の仕事
・放っておくと、ブラックボックスになってしまうので、組合も協力してくれる。
・実際、現場での高い技能職の給与が上がっている。
(例えば、重機のベテラン職人の給与は上がっている。しかし人数は減っている)
・漫然とした文系に先は無い。高専には、一人30社の就職先がある。
◎今後は、産業構造が大きく変わっていく
サイバー系とリアル系の相互補完関係がおこっている。自分たちの立ち位置がどこか、をはっきり意識した経営を行うこと。
・例えばテレビに関しては、機器は単なるディスプレイになってしまった。
だからソニーは、手放した。一方価値が生まれるのは、アマゾンやネットフリックス。
見る楽しみを提供することに価値がある。
・熊野古道の観光に、直接外国から予約が入る。(リアルの強さがデジタルによって、容易に発揮されることになっている。)
・AIは自然言語なので、その革新が全体にかかってくることになる。
(日本の場合)地上戦レイヤーで、現場で飯食っているところが、結局勝てるのではないか。
事業再生の場合、どうやったら人を確保できるのかの方が問題になっている。
(人員削減の再生より、よほど本来的でいいと思う。)
この「サイバー系とリアル系の相互補完関係」ということでは、南場会長のディーエヌエーの事業展開が典型でしょう。
また「(日本の場合)地上戦レイヤーで、現場で飯食っているところが、結局勝てる」とのことですが、
この点は、私もまったくその通りと思います。日本の強みは、「職人的な(人や自然との)すり合わせ能力」にあり、
生成AIをフル活用しながら、その強みを新しい形で活かすことが日本企業の勝ち筋であるよう思います。
「人(社員)の持つ創造性や創意工夫の力を最大限発揮させる経営」と言うことになるでしょう。
◎長距離走の組織能力が求められている。
「分ける化、見える化」の勝負
(各事業、商売、お客様毎、商品毎、さらに月ごと、週、日、時間ごと・・細かく捉える)
・配布コストの問題、取引の大きな顧客が実は実質赤字の場合も多い。
・限界利益が出ているものを辞めると、全体として赤字になる場合も多い。
・共通固定費を「分ける化、見える化」出来ていない場合が多い。
例:バスでは、ICカード化によって、停車場の利用頻度、運転手、整備士ごとのリアルデーターの活用。
他の分野でもAI技術の活用で可能だ。組織能力の差が出てしまうことになっている。
・日本の根源的強みは、組織力だろう。だからその組織力を高めるような活用が求められている。
(IT専門家でなくとも)誰でもすぐ使えることも、AIの特性だ。
「長距離走の組織能力」と言う言葉に、とても共感しました。
これまでの日本企業の多くが停滞してしまった一番の原因は、
(大雑把な取り組みのまま)目先の業績結果だけにとらわれてしまったことと思います。
それも、国内だけのコスト競争に陥って、設備投資、開発投資を大幅に削減するとともに、
人件費や教育投資も大幅に削減しました。まさに縮小思考に陥った結果と言っていいでしょう。
この話は、もっといろいろお聞きしたいと思いました。今後の楽しみにしたいと思います。
◎最後に
日本の中堅中小企業には、大きなチャンス。少子高齢化なので
AIを活用しても、日本では暴動は起こらない。みんなウェルカム。生成AIとは補完しあえる。
今後、中国が先行しているフィジカルAIが出てくるので、床掃除や荷物運び等の簡単な作業は劇的に安く使えることになるだろう。
しかし、サービス業は人が対面する所に一番の付加価値が生まれる。そこに焦点を当てたビジネスを進めていくべき。
老人もAIネイティブになれる。みんな平等な立場だ。
最後の老人の話は、自分に当てはまりよくわかります。若いかどうか、と言うことより、
新しいことにワクワクする気持ちを忘れず、実際に生成AIも含めて、何かに挑戦しつづけること。
経営者であれば、なおの事でしょう。リアル現場のノウハウを、生成AIを使ってどう価値に結びつけるか?
そこに、焦点を当てたいですね。
ところで、話は変わりますが、・・生成AIを使いこなしている私の親しい知人(自営業者)は
「生成AIは日々進化していて、すごいことになっている」と言っています。
「事務仕事の大半は、生成AIで、簡単に出来るようになった。友人のビジネス展開も、
ネットを使った道具を生成AIに作らせすぐ活用できるようにした。その道具を作るのに、使った時間は一時間もないよ。
それくらい簡単に出来るようになっている」とのことです。
何がどうなっているか、ますます生成AIの動き、社会の動きが気になって来ています。
ということで、今回もありがとうございました。
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
