2025年6月6日

㈱メディロム 江口氏のご講演【前編】―ベンチャー企業のナスダック上場物語に、ハラハラドキドキ。新規事業も魅力満載!―

 

―ベンチャー企業のナスダック上場物語に、ハラハラドキドキ。新規事業も魅力満載!―

~ 今春(2025.1)大会講演への感想として②-1【前編】~

 

はじめに

今大会で最も刺激を受けワクワクしたのは㈱メディロムの江口康二社長のご講演です。
緊急代理の分科会での開催でしたので、聴講された皆さんは比較的少なかったのですが、
最新のビジネス現場からの実例として、ナスダック上場という貴重な経験を臨場感もってお話していただき、
一気に引き込まれてしまいました。また後半の新規事業のお話も、最新のビジネスの考え方を取り入れた先進事例として、
とても興味深い内容でした。ごく一部の皆さんが聞いただけではもったいないと思い、
ご講演内容を拙いながらご紹介したいと思います。

講演タイトル
「目指すは、ヘルスケアの総合商社 世界のヘルステックに変革を起こす!」
㈱メディロム 代表取締役CEO 江口 康二 氏

・21年ぶりNASDAQ上場の背景、光と影
・予防サービスでの初のマネタイズ成功実例
・世界に闘いを挑む、日本の技術の結晶MOTHERとは
・ヘルスケアビックデータが起こす革命前夜

プロフィール
今、日米で注目の経営者。27歳でヘルスケアのベンチャー企業を立ち上げ、リラクゼーションスタジオを
300点超展開。2020年、米国ナスダック上場。オンデマンド・ダイエットアプリケーション「LaV 」や、
世界初充電不要の活動量計デバイス「MOTHER」の開発など、ヘルスケア領域で幅広い事業を展開している。
(現在は、起業して25年目、52歳。「ReRaKu」というリラクゼーションスタジオで1,800人のセラピストと提携している、とのことです。)

お話の前半は、日本企業として21年ぶりのナスダック上場にまつわる(理不尽な?)大変な苦労話。
後半は自社の最新の新規ビジネス展開についてです。順番にご紹介したいと思います。
 

―なぜ、日本で上場しなかったのか?・・『前例がない』ことの壁の厚さ―

江口社長のお話は次の通りです。
日本で上場しなかった理由は、「東証上場を断られたから」。2000年ごろ東証に上場を問い合わせたところ、
「御社のビジネスは、産業分類に無いから上場は引き受けられない!」と断られてしまったことが始まりだそうです。
それで諦めるわけにいかないので2007年にリラクゼーション協会を設立。
そして2010年リラゼーション業が職業分類として成立し、2014年とうとう「リラクゼーション業」として産業分類に登録されることに。
ところがそこまでになっても「医療関連事業」とは違う、と言われ上場を否定されてしまった。前例がないので認められない、
という姿勢にがく然とした。それで、これでは埒があかないので2017年頃から米国市場での上場を検討することになった、とのことです。
今の日本の閉塞感が如実に現れているようなお話に「へ~え」と思いながら、すぐ引き込まれてしまいました。
 

―ナスダック上場が、唯一の救いの手段。現実的な目標にー

しかし、日本法人の米国での上場はほとんどない事が判明。
そうこうするうちに、2020年コロナ禍に突入。ショッピングセンターが閉鎖になり、売り上げゼロ。
人件費ばかり支出の上、テナント料3億円支払いで、資金繰りがひっ迫。何十行もの銀行に融資を依頼するもすべてゼロ回答。
政府補助金も一店舗50万円で二店舗以上は合計100万円のみ。
そこでいよいよナスダック上場を現実的な目標として捉えざるを得ない状況に陥ってしまった、とのことです。
ではなぜ、ナスダック上場が窮地を脱する手段と捉えることになったのか。
ひとつには、ナスダックでは準備期間が10カ月以内でも上場可能なこと。
今一つは、ナスダックにリラクゼーション業界の会社が2社上場していて、コロナ禍で売り上げゼロにもかかわらず
時価が下がっていなかったこと。アメリカではヘルスケアセクターが市場として一番大きく、
高成長を期待されて高評価を受けていたことが大きな理由だろうと、おっしゃっていました。
一方で、これまで日本企業がナスダック上場をめざさなかった理由も調べたそうです。
その結果は、『日本で前例がない』という大きな壁があるから、という結論になったそうです。

① 監査法人の壁として、アメリカでの上場の経験がない。
その上、日本での監査対象期間は10年間になり、時間もかかるが費用も10億円程度と言われている。
一方、アメリカは2年分の監査のみで、2~3か月で監査が済む(こともある)。

② 日本の監査法人が、(ナスダックでの)訴訟リスクを嫌う(ので勧めないし、むしろ止めてしまう)。
ところが調べてみると、単なる都市伝説で、過去ナスダックでの訴訟はゼロ。ニューヨーク証券取引所でもトヨタの一件のみ。
そうした調査をした上、実際4月29日の役員会でナスダック上場を目指すことを決めた、とのことです。

 

―追い込まれた上場準備の実際―

それから実際に上場準備に入って、米国の監査法人(200~300社)に上から順番に電話。
55番目に、Yesをもらい、3か月でやれると言ってくれた。監査費用も、コロナ禍を理由に上場後でOK。(証券会社の費用も同様)
実際5か月後に有価証券報告書を作成。6カ月後に提出。実は8か月で資金がぎりぎり尽きる状態で、
年内上場が出来ないとアウト、というところまで追いつめられていた。
米国の常識では、上場の日は不明で、ある日突然決まる。日本の某大手証券会社にも入ってもらうことをお願いしたが、
「『前例がない』からやらない、前例が出たらやる!」なんて言われ、トンチのような問答と思った。
年末敗戦ムードの中、むこうの証券メンバーに日本語で「絶対やるんだ!」とパッションで発破をかけてしまうくらい、自分も追いつめられていた。
で、2020年12月29日朝6時「すべての審査が通った」と米国から連絡が来て、この時はじめて引受契約が出来ることになった。
決断してからピッタリ8か月で上場。初値19.8ドルで、時価総額100億円。赤字真っただ中、
1月15日の給与支払が出来ない状態でのぎりぎりの上場。
事業のポテンシャルを評価してくれた米国の懐の深さをしみじみ実感した次第である。
 

―日本市場と米国市場の違い、戸惑いー

上場後は、次のような日本の常識と米国の常識のギャップに苦しんだそうです。
1)ナスダック上場後、業績は上がり続けているのに、株価は下がり続けている。
日本で緊急事態宣言発表後、必ず株価下落。現在総資産120億円なのに、時価総額10億円にしかなっていない。
2) 日本は中期経営計画が中心。米国では中計は出さないし、出せない。弁護士がサインしない。
3年後5年後の業績を予測しても、確約できないから。
3)米国では、監査遅延が数十パーセントの割合で多発。当社の場合、日本基準で監査されたうえに、米国で行われるので時間がかかる。
但し、それでも存続可能。実際ナスダックの2社が最後まで監査されない状態で済んでいる。
4)米国と日本では、減価償却の方法が違う。また、上場維持基準抵触の警告レターが多発されるが、実際に上場廃止になることは無い。
 
ということで、ナスダック上場についてのお話は以上でしたが、ハラハラドキドキの体験がビビットに伝わってきて、
ほんとに貴重なお話をお聞き出来た、と思います。江口社長ご自身がその当時のハラハラドキドキを思い出して、
楽しんでお話ししているといった感があり、苦労話がどこか面白おかしい話のようにも聞こえてしまった、というのが正直な感想です。
実際大きな障害に襲われたとき、あまりに厳しい状況なので、それをワクワク楽しんでしまうぐらいの心根が、
成功するビジネスチャレンジャーには必須だ、と改めて思いました。
また、米国での上場を異国でのビジネス活動の一種として捉えるなら、そこには日本と全く違った外部要因があるのは間違いなく、
そのことを当たり前に踏まえて邁進することが、何より大事。『前例がない』 などという言葉は禁句、と改めて思えた次第です。
 
後編へ続く
「今春(2025.1)大会講演への感想として②-2」
―ベンチャー企業のナスダック上場物語に、ハラハラドキドキ。新規事業も魅力満載!―

文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏

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