―ベンチャー企業のナスダック上場物語に、ハラハラドキドキ。新規事業も魅力満載!―
~ 今春(2025.1)大会講演への感想として②-2【後編】~
(前編はこちら)
前半は、ナスダック上場のお話でしたが、後半は自社の新規事業についての解説でした。
その内容がとても興味深く、私なりの感想も交えてご紹介したいと思います。
―予防サービスでの初のマネタイズ成功実例―
江口社長のお話は、次の通り。
米国において(健康に関する)予防サービスのビジネスは盛況になっており、例えば瞑想ビジネスでは、
時価総額が4,000億円にもなっている事例もある。その要因として米国では介護保険制度が無いこともあげられるだろう。
一方日本の場合、健康保険制度が充実していることもあって、そうした予防サービスが普及しにくく、
ビジネスとしてはこれまで成功していなかった。そうした中、同社の事業が初めての成功例と言える。
その内容は・・当社でオンデマンド・ダイエットアプリケーション「LaV 」を開発して、無料で提供。
あわせて有料で、専任コーチがチャットで各人のデータを見ながら、生活習慣のアドバイスを定期的に行うサービスを提供する。
お客様自身で専任コーチを選べるので、男性は女性が多く、女性は男性が多い(笑)。
多くの健康保険組合と提携できているのが、ビジネスとして大きい。組合にメタボの人がいると、
組合として罰金を払わなければならない制度になった。そのため、組合がメタボの人を当社に紹介してくれる。
一人あたり3万円/年だが、組合が払ってくれるため本人負担ゼロ。完走率98%。自分が選んだ人と会話でき、
応援してくれることで、本人のモチベーションの上がることが大きな効果を生んでいると思う。
そのコーチは、同社のリラク店舗の1,800人のスタッフに副業としてお願いしている。なので、人材募集費用はゼロ。
一方スタッフには、副業収入と新たなやりがいを与えることが出来ていて、一石二鳥になっている。
現在完全黒字化しており、まだまだ伸ばせると思っている。
この事業についての説明は以上ですが、私の感想として、「携帯アプリ」の開発をリラクゼーションサービスの会社がおこなう、
という異種格闘技をサッと実現されておられる事。それから、そのコーチに自社スタッフを活用している事。
いずれも、素晴らしい戦略的な実践と思えました。私の勝手な想像ですが、フィットネスジムのライザップは、
担当スタッフが携帯を使って顧客が食べた食事等の情報を基に食事制限のアドバイスをしていますが、
そうした他社の事例を参考にしたのではないか。あるいは実際自社のリラク事業で、コーチが店舗外でも、
担当するお客様のために携帯を使ってアドバイスする事例があったのではないか、なんて思ってしまいました。
いずれにしても、個別に対策を分解するなら、考えられることでも、そのことを結びつけることで
新しいビジネスモデルを創造しておられるわけで、その発想力と実行力がなにより素晴らしくすごいなと思います。
その結果、思いもよらない新しい顧客層を開拓できているわけで、そのことも単なる幸運というより、
現在より深刻化しつつある“健康問題”という社会課題を踏まえて、
潜在ニーズをいち早くとらえた、必然的な幸運ではないか、と思えた次第です。
―世界に闘いを挑む、日本の技術の結晶MOTHERとはー
今一つの新規事業は、“MOTHER”と言うウェラブルデバイス端末(時計型)の独自開発とその活用を図る事業です。その差別的な特徴は二つ。
<“MOTHER”の差別化ポイント>
① 全く無充電でOK。人間の体温を電気に切り替えるセルフ発電方式で、世界初の製品である。
・シリコンバレーで開発された最新技術の独占的権利を取得して、ソニーとキャノンのエンジニアに作ってもらった。
コロナ禍で、エンジニアに比較的時間があったことがラッキーだった。
② オープンソースで、ユーザー事業者が、自分たちのデータとして自由に活用できるし、自社だけにクローズできる。
・競合巨大企業のデバイスの場合、自社のクラウド上にデータを残すため、ユーザー側で自由に活用しにくいし、
クローズ化できない(情報漏洩のリスクが大きい)。
上記の差別化によって、新しい市場の開拓が可能となっているとのことです。
<対象となる市場として>
① 介護施設及び、独居老人の見守り関連
・介護施設では、現在夜2時間ごと体調管理のための見回りがされている。
そのことで、本人は夜中に起こされて体調不良を引き起こしやすくなっているし、スタッフの負荷も大きい。
それが“MOTHER”を装着すれば、一日中体調管理ができ、万一体調不良が起こってもアラーム情報が発信され、すぐ対応できる。
防水なので入浴時もOK。「リーモート・モニタリング・システム」になっている。このため、現在介護施設でどんどん展開が進んでいる。
・また、独居老人の見守りもOK。転倒、意識障害等の異常事態には、即アラーム。
カメラによる見守りと比べて、プライバシーが守れることは大きなメリットがあるだろう。
② 物流や工場での従業員健康管理
・運転手や工場作業員等に対する、日常作業時の健康管理に活用でき、一部導入が進んでいる。
③ 米国、某(軍隊?)組織での導入
・隊員一人一人の体調と位置情報のリアル管理に使われることになった。
無充電でOKなので、何か月も緊迫した状況下でそのまま使えることが決め手。
また、自分達だけのデータとして集中管理できることも大きい。
他社のシステムでは、データの機密を確保できないし、自分達で活用しにくい。
ナスダック上場で、米国企業として認知してもらえていることも大きい。
ということで、この新規事業も今後の進展がとても期待できる、とのことでした。
以上、2つの新規事業の紹介でしたが、最後に㈱メディロムの事業について、
経営コンサルタントとして私なりに考えたことを述べたいと思います。
―これからのAI時代に向けた、新しいビジネスモデルの展開―
既存事業と2つの新規事業の3つのビジネスモデルについて、その共通項と違いに着目してみると、
これから目指すべきビジネスの姿がそこに現れている、と私には思えます。
共通項としては、どのビジネスも「人々の健康に関わる」ことをテーマにしている事。
このテーマは、全世界的な高齢化や環境問題、さらにはデジタル化の進展を考えると、「人間のこころ」の問題とあわせて
最重要テーマの一つであることは間違いないですし、その課題の重さは今後ますます大きくなっていくよう思います。
一方違いという点でも、とても興味深いビジネスモデルの展開をされていると思います。
既存事業のリラクは、チェーンオペレーションとしての標準化やマニュアル化は必須と思いますが、
顧客とスタッフの関係が直接濃密である中で、人の持つ専門ノウハウや感性を最大限発揮する、
スタッフのお客様への個別対応力がなによりの顧客価値と思います。
その個別対応力を一人一人にいかに発揮してもらえるようにするか、その見えない運営能力や組織力、
そしてその結果としてのブランド力こそが、一番の強みでしょう。
一方、新規事業の「LaV 」は、アプリ機能を活用したお客様とスタッフの共有による、
お客様への遠隔サポートサービスであり、人とデジタル技術の両方が同等に必要になっています。
今後デジタル技術が高度化することで、人のサポート力もより高まっていくことと思います。
と言っても、最後は、暖かな心を持った人の専門サポート力が何より顧客価値になっていることに変わりないでしょう。
さらに、もう一つの新規事業の“MOTHER”になると、徹底してデジタル技術の先端的な差別性がビジネスの決め手となっています。
但し、この機器をどう活用していくかという点では、今後多様な用途が考えられ、
それに合わせた新たなデジタル技術が求められてくるでしょうし、その活用方法自体が貴重なノウハウになってくるものと思います。
ということで、人とデジタル技術との関係で見ると、
㈱メディロムの事業は3つの関係性をすべてカバーしていることがわかります。
① 既存事業のリラクは、人が優位
②「LaV」は、人とデジタル技術が対等
③ “MOTHER”は、デジタル技術が最優位(但し、今のところは・・)。
このように、人とデジタル技術における3つの関係性のフェーズすべてをカバーしてビジネス展開出来ている企業は、
現在のところ(全世界的に!)唯一と思いますし、そのことがこれからの㈱メディロムにとって、
何よりの強みになってくると、私には思えます。それも、既存事業において、生きた人(顧客)を相手に、
人(スタッフ)が身に着けるべき専門ノウハウや感性を組織的に蓄積し活かしてきた
①のビジネスモデルの強みが、②と③にも活かすことが出来るなら、
より参入障壁の高い、魅力的で独自なビジネスが展開できると思えます。
例えば、②の「LaV 」について言えば、今後スタッフのサポート力をより強化するために、
実戦的な指導ノウハウや専門デジタル技術が求められてくると思います。
その時①のこれまでのビジネスノウハウがより活きるはずです。
実際メタボな人への支援と、高齢者の運動不足のフレイル予防対策や、軽度うつ病化対策では、そのサポート方法は大きく違うでしょう。
そうした対象テーマによって求められる専門ノウハウやデジタル技術は大きく違うものと思いますし、
その専門ノウハウやデジタル技術こそ、一番の差別的価値になるでしょう。
そのことは、③の“MOTHER”の事業も同様であり、その活用場面の違いで、新たなデジタル技術が求められる可能性がありますし、
その活用する顧客側の実践的ノウハウがより大事になってくるのは間違いないでしょう。
今後、そうした場面テーマ毎の実践ノウハウの蓄積こそが、デジタル技術の先端性以上に
ビジネス価値としてより大事になってくる、と私には思える次第です。
ということで、江口社長のこれからのますますのご活躍と㈱メディロムのご発展を、とても楽しみにしています。
追伸:
この感想文を作成している途中で、今回7月の全国経営者大会で、江口社長のご講演が再度予定されていることに気が付きました。
ですので、ご講演内容については、7月の大会講演でご確認していただければと思います。
この感想文が、ご講演の補足的な紹介文となっていただければ、幸いです。
文責:株式会社CBC総研 山川裕正氏
(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)
講師SELECT 山川裕正氏 プロフィール(講演依頼サイトの講師SELECTにとびます)