29.組織構造の変化にズレがないか |
先を読む切り口が現場にある。このことに気づかない経営者が多い。
行政の委員として大規模店の出店についての審議会の委員をしたことがある。
この委員会は、大規模小売店が出店した場合に、地域にどのような影響を与えるかを判断し、
問題がない場合に出店を承認するものであった。この時に感じたのが、小規模小売業の多くが
努力不足であったということだ。それにもかかわらず、小さな会社は弱者であり、
守らなければならないという考えが主流であった。
また大型店であっても、かつての稼ぎ頭であった家電部門が足を引っ張っていても、
なかなか廃止できないというものもあった。それをカタチだけ変えることによって、
極端に言うのであれば、名称を変えるだけ、タテのものをヨコにしただけで、
何とか乗り切ろうというものだった。
「どう見ても黒字転換は難しいのだから、思い切って部門を廃止したらどうですか」と話したところ、
その大規模小売店の管理者は下を向いてしまった。
小売業は堅実に延びてきたし、それなりの社会的意味も持っている。
ところが、市場の変化は中途半端な大きさを求めなくなってきている。
では、大きいか小さいか、というとそうではない。実は大きさ小ささよりも顧客への
対応力が求められているのだ。
多くの小売業は、このことが出来ていない。それは、企業の集団規範が大きく影響している。
つまり、手をつけたくないということだ。それがために、いたずらに店舗を大きくしたり、
小さくしたりという表面的なことだけを行い、直接的な手を打たなくても組織の浄化作用により
時間の経過と共に解決するものもある。
ただ、組織の浄化作用(カタルシス)とは、それを戦略的に組み込んだ場合に、
表面化してくるものであり、そうでなければ難しい。
また、事業別の損益を明らかにするということは、利益を向上させるところにある。
そして、儲からない部門は廃止するということだ。
ところが、これが出来ない。多くの経営者は、赤字部門が発生すると、それを全体の収益力で
埋めようとする。つまり、業績のよい部門の中に入れてしまうということだ。これにより、
赤字部門がなくなるということが表面的には起こる。
しかし、赤字部門は堂々と生き残ることになってしまうのである。
多くの組織が、継続的に収益の上げられない背景には、何らかの目的があって編成したはずの
組織が運営していく内に、ご都合主義の目的に変わってしまうことにある。
組織は、浄化作用と同時に、物事を分からなくしてしまう。
組織には、汚染(ポリューション)作用も持っていることを忘れてはならない。